痙縮について 〜神経経路〜
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はじめに

 

臨床中、脳卒中などの上位運動ニューロンの障害により、痙縮を伴う対象者に対して、痙縮の理解が曖昧なため、ひたすらリラクゼーションや努力性になる様な課題・筋トレを提供していました。
もちろん何も変化がないまま退院していく対象者も
いました。自分の不甲斐なさを感じ、一から勉強しようと思い、参考書・文献などにかいてある情報をまとめてみました。

 

痙縮とは

 


 

痙縮とは、上位運動ニューロン病変により、間欠的または、持続的な筋活動をきたす感覚・運動障害。
(Pandyan AD:2005)

 

中枢神経である上位運動ニューロンの障害により、運動速度依存性の伸張反射の亢進を呈し、腱反射の亢進を伴う運動障害。
(Lance JW :1980)

 

上肢では屈筋群、下肢では伸筋群に筋緊張の亢進を認める。これは、屈筋群と伸筋群の筋肉量の違いや、筋紡錘の違いによる。
(内山ら:2017)

 

上位運動ニューロンは、脳卒中などの原因で障害されることで、本人の意思とは、関係なく筋緊張が高まる状態を指します。

 

 

上位運動ニューロンとは

 

上位運動ニューロンとは、大脳皮質運動野や脳幹から始まり、運動情報を下位運動ニューロンに伝える経路です。
また脊髄を制御する下行性経路のことをいいます。下行性経路には、5つの経路に分類する事が出きます。

 

・視蓋脊髄路

 

・赤核脊髄路

 

・皮質脊髄路

 

・網様体脊髄路

 

・前庭脊髄路

 

痙縮に関連のある経路は、網様体脊髄路・前庭脊髄路が関与しているといわれます。

 

 

 

視蓋脊髄路

 


視蓋脊髄路
中脳の上丘からすぐに交叉して、脳幹内側部、脊髄前索を下行する経路です。
役割として、主に眼球運動の方向付けや、頭頸部の動きに関与するといわれています。
実際に視蓋脊髄路は、痙縮に関与していません。

 

赤核脊髄路

 

 

赤核脊髄路
中脳の赤核からすぐに交叉して、脳幹腹外部、脊髄側索を下行する経路です。
役割として、主に四肢の遠位筋に関与するといわれています。
また、随意運動を行う錐体路の働きを助けて各関節の屈曲を起こす屈筋に促進的に作用しています。
しかし、「ヒト」は、ほとんど作用されておらず、痙縮に関与していません。

 

皮質脊髄路

 

 

皮質脊髄路
前頭葉運動野から始まり、放線冠→内包後脚→大脳脚→橋→延髄を通る経路です。

延髄までは1つの束になっていますが、それ以降で外側皮質脊髄路前皮質脊髄路にわかれ、それぞれ脊髄を下行し、運動ニューロンに連絡します。

 

外側皮質脊髄路
前頭葉運動野から放線冠、内包を通り延髄で交叉します。役割として、遠位筋に関与するといわれています。

 

前皮質脊髄路
前頭葉運動野から放線冠、内包を通り延髄で交叉しません。
役割として、体幹の運動に関与するといわれています。

 

皮質脊髄路に対しての研究・実験

サルを使った研究では、運動野や皮質脊髄路を単独で損傷させると弛緩性麻痺は起こるが、痙縮は起こらなかった。
(Lawrence DG:1968)

 

このことから、皮質脊髄路は痙縮に関与していないと考えます。

 

網様体脊髄路

 

 

網様体脊髄路:脳幹に広がる網様体から同側あるいは、両側の脊髄前側索を下行する経路です。
網様体脊髄路は、延髄の網様体から始まる背側網様体脊髄路
橋の網様体から始まる内側網様体脊髄路にわけられます。

 

背側網様体脊髄路
延髄網様体から始まり、延髄網様体は、背側網様体脊髄路を介して四肢の筋緊張を制御する役割があります。
しかしその機能は大脳皮質からの皮質網様体によって制御されています。

 

内側網様体脊髄路
橋網様体から始まり、橋網様体は、内側網様体脊髄路を介して体幹・近位筋の筋緊張を制御する役割があります。

 

網様体脊髄路による実験

サルによる研究では皮質網様体路を損傷させると、体幹や近位筋の制御が困難となり、さらに筋緊張の亢進も認められることがわかった。
(Lawrence DG:1968)

 

皮質網様体路が運動前野や補足運動野から始まっていることから、サルでその部位を損傷させても同様に筋緊張の亢進が認められた。
(Gilman S:1971)

 

このことから、運動全野や補足運動野が損傷されることで、皮質網様体が背側網様体脊髄路を制御できなくなり、背側網様体脊髄路による脊髄反射回路の興奮性を抑制することができなくなる。
そのため、筋緊張の亢進が生じると考えられます。

 

前庭脊髄路

 

 

前庭脊髄路:橋から延髄に広がる前庭核から同側の脊髄前側索を下行する経路です。
前庭脊髄路では、前庭で感知される重力情報によって、頸部、体幹、下肢の筋緊張に関与しています。
ようするに、前庭が重力方向を感知することで、前庭が興奮し、脊髄反射回路の興奮性を促通するようになっています。
そのため、頸部、体幹、下肢の筋緊張に関与する前庭脊髄路が障害されると、脊髄反射回路の興奮性を抑制できずに痙縮が生じる仕組みになっています。

 

まとめ

 

 

5つの経路の中で、痙縮に関与する経路は、網様体脊髄路(背側網様体脊髄路・内側網様体脊髄路)、前庭脊髄路である。

 

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図:リハビリmemo より

 

背側網様体脊髄路による制御性の作用と、内側網様体脊髄路、前庭脊髄路による興奮性の作用のバランスが障害される事で痙縮が生じる。