
有病率
海外の報告では、
脳卒中:35%以上。
重度頭部外傷:75%
脳性麻痺:90%
脊髄損傷:80%
多発性硬化症:90%
の対象者が痙縮を呈すると報告されている。
また、脳卒中の対象者は、平成26年の厚生労働省の調査で約118万人いると報告されている。
単純計算では、痙縮の対象者だけでも41万人以上いることになる。
引用:痙縮の疫学と治療https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcns/26/12/26_882/_article/-char/ja
症状
主に、手指が屈曲してしまい伸展が困難。肘関節が屈曲したまま伸展が困難。足関節が背屈しそのまま動かなくなるといった症状が見られる。
この様な症状が続くと、筋が固まり関節可動域に制限が生じ、これを拘縮と呼ぶ。
①上肢
肩関節の内転・内旋
目標物へのリーチが困難。更衣や整容・入浴に支障をきたす。
肘関節の屈曲
更衣の際に伸展が困難なため、支障をきたす。
前腕の回内
手掌の向きコントロールする事が困難となる。
手関節の屈曲
手根管症候群を引き起こす原因となる。
手指の屈曲
手指のつまみ動作が困難。
爪が手掌面にくい込んでしまい、清潔を保つことが困難。
②下肢
股関節の内転
はさみ肢位を呈する。移乗動作や、ベッド上での排泄動作に支障をきたす。
膝関節の過伸展
膝が歩行中に伸展したままとなるため、床に足部が引きずらないように患側の骨盤を引き上げて歩行する。(分回し歩行)
尖足・内反尖足
支持基底面が不十分なため、移動や移乗を妨げる最も大きな要因となる。
その他
股関節の屈曲・膝関節の屈曲・母趾の過伸展などが生じる場合がある。
引用図:https://blog.goo.ne.jp/m0m0fumi/e/d2ee2c55be71063f927be6cc65820925
評価
①ROM測定
麻痺側の各関節の可動域を確認する。筋緊張が軽減することで関節可動域の改善が期待出来るためや、拘縮の有無を判断するのに重要となる。
②MAS (Modified Ashworth Scale)
MASは、対象者の肘関節・手関節・膝関節・足関節にて測定する。
原則、いずれの部位も3回の測定を行い、最も低い値を採用する。
他動運動時、各関節の動きの目安は1秒で完了するようにする。
注意点
原則、端座位で行う。下肢では背臥位で行うことも可能。
疼痛や拘縮がある場合は、検査肢位に近い安楽な姿勢でも可能とする。
引用:Modified Ashworth Scaleの信頼性の検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2004/0/2004_0_A1067/_article/-char/ja/
③DAS (Disability Assessment Scale)
上肢痙縮に伴う障害を測るために上肢痙縮者を対象とした評価である。
評価項目として、ADLにおける手洗いや更衣動作を反映するものや痙縮に伴う上肢の異常肢位や疼痛がある。
対象者へのインタビュー方式で評価する。
DASの評価項目
引用:Disability Assessment Scale を用いて評価した上肢痙縮に対するボツリヌス療法の効果 http://square.umin.ac.jp/jjcrs/2017_4-9j.pdf
痙縮に対してのリハビリ・治療
①片麻痺の痙縮に対して、ダントロレンナトリウム・チザニジン・バクロフェン・ジアゼバム・トルペリゾンの処方を配慮することが勧められる。(グレードA)
著明な痙縮に対しては、バクロフェンの髄注が勧める。(グレードB)
②痙縮による関節可動域に対し、フェノール・エチルアルコールによる運動点あるいは神経ブロック(グレードB)および、ボツリヌス療法(グレードA)が勧められる。
③痙縮に対して、高頻度のTENS(経皮的電気刺激)を施行することが勧められる。(グレードB)
④慢性期片麻痺患者の痙縮に対するストレッチ・関節可動域訓練が勧められる。(グレードB)
※グレードA・Bのみ記載。
引用:脳卒中ガイドライン2015
http://www.jsts.gr.jp/guideline/308_312.pdf