
脳卒中後の対象者に対して上肢機能課題を行う際に、道具や物品を用いてよく介入します。
“あなたは、対象者の筋の動きや骨格の動きのみに焦点を当てて介入していませんか?”
もちろん、とても重要な事です。
その他にも、
脳の神経メカニズムに焦点を当てる事も極めて重要
です。
しかし、
「脳の神経メカニズムを理解するのは難しい、、、」
と感じる人は多いと思います。
そんな人でも理解できる記事を書きました!
記事を読む事によって生じるメリットは、
・道具を使用する脳神経メカニズムを理解できる!
・リハビリプログラムの幅が広がる!
また、
重要な文章に対して青文字で記載している為、印象に残りやすくしています。
記事の構成としては、
となります。
では、早速解説していきます!
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目次
物道具を認知するメカニズムを理解する
上のイラストの行動を行うには、
・チェスの位置や、チェスが自分の身体に対してどの様な位置にあるのか?
・チェスの形はどういった形をしているか?
を認識する必要があります。
以下のイラストが
物品を認知する脳内のメカニズムです。
引用:vision: consciousness a window on
①:
眼球でとらえられた視覚情報のほとんどは後頭葉のV1(一次視覚野)に向かう。
②:
V1でで処理された視覚情報は、視覚前野の一部であるV2(二次視覚野)を主とした多数の高次視覚野へ次々と転送される。
③:
それ以降は、大脳の頭頂葉へ向かう背側視覚経路と、側頭葉へ向かう腹側視覚経路の2つにわかれます。
1)背側視覚経路
概要:
V2から後部頭頂皮質に至っており、物体の位置や奥行きに関する情報・動きの速さとその方向を認識します。
機能:
物体に対して到達把握運動を行う為の視覚情報を提供する。
障害が生じると:
半側空間無視・傾きの認知障害・構成障害などが生じる。
2)腹側視覚経路
概要:
V2からV4(四次視覚野)や外側後頭連合野、紡錘状回を経て下側頭皮質に至ります。
主として色や形に関する情報を処理し、その二次元情報から視覚対象が何かを理解します。
機能:
物体の大きさ、形、色、表面の状態に関する視覚情報を提供する。
障害が生じると:
人物や物体の認識、弁別に障害される。
この様に、視覚連合野の背側および腹側経路は、視覚情報処理においてそれぞれの役割を果たしています。
よって
作業空間や対象となる物品が正しく認知されていなければ、物品や道具の使用に困難が生じます。
到達・把握運動の個の動きを理解する
ヒトは物品に手を伸ばしてつかむ際に、
ほとんど無意識に行っています。
それは、視覚情報をもとに「背側視覚経路」が関与しており、適切な達成把握運動を出力する為の情報処理が行われているからです。
その過程として、
物品に手を伸ばす。(到達運動)
物品をつかむ。(把握運動)
という2つの要素を含んでいます。
背側視覚経路は、2つの下位経路
「背背側経路」と「背腹側経路」に分けられています。
1)背背側経路
到達運動に関与しています。
到達運動は、物体の位置に関する空間情報と対象者の身体肢位に関する情報の統合を行います。
主に、上肢の遠位筋が関与します。
2)背腹側経路
把握運動に関与します。
把握運動は物体の性質や特徴に関する視覚情報と手の肢位に関する情報の統合を行います。
主に、上肢の遠位筋が関与します。
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到達・把握運動の一連動作を理解する
到達運動と把握運動のそれぞれの神経ネットワークが相互連絡しあう事で、多様な日常生活動作への適応を可能にしています。
その中で重要となってくるポイントとして、
①自分自身の身体状況
②対象物と対象者の空間関係
③使用する物品の意味知識
を脳内で考えながら、到達把握運動を選択している事になります。
その際に、
運動前野や頭頂連合野といった前頭−頭頂連関、また縁上回の前部
が重要な役割を果たしています。
1)運動前野
概要:
運動前野は、頭頂葉から送られてきた様々な感覚情報から、対象物の視覚情報をもとに、どの様な動作が可能であるかを選択する役割があります。
2)前頭連合野
概要:
側頭葉、頭頂葉からの知覚や記憶情報をもとに、前頭連合野が運動を計画・実行する役割があります。
3)頭頂連合野
概要:
到達把握運動に関わる視覚情報を運動前野へ投射するとともに、前頭葉からの遠心性コピーと身体に入力される感覚情報の両方に基づいて、身体状況に関する内的な表象を修正・更新する役割があります。
4)縁上回の前部
概要:
縁上回前部の機能として、物品そのものの意味情報や、把持した物品の典型的な使用法に関する知識を司る下側頭回、中側頭回からの入力を受けており、意味記憶に基づいた物品の使用を可能としています。
物品を離す動きを理解する
通常、物品を離す際に急に落としてしまう事なく、ゆっくりと机に置く事が出来ます。
要するに
"物品を把握する力の程度を円滑に調節する事が可能"
という事です。
物品を離すのに関与するのは、一次運動野・補足運動野・前補足運動野が中心となります。
1)一次運動野
筋を収縮させる際に大きく関与します。
2)補足運動野・前補足運動野
筋の弛緩させる際に大きく関与します。
また、把持した物品の形状や材質などを考慮し、
リリースする力やタイミングを調整するのに関与します。
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両手動作の動きを理解する
日常生活では、
①拍手をする。
②荷物を両手で持ち上げる
③パソコンのキーボードを両手で打つ。
④包丁で野菜を切る。
など両手で行う動作が大半を占めています。
①、②は、両手が同じ動きをする動作。
③、④は、両手がそれぞれ別の動きをする動作。
分ける事が出来ます。
ヒトは本質的に両側肢が同じ様に動く傾向があります。
その為、両手動作は、左右の動きを抑制する必要があります。
つまり、
両手動作のスキル獲得には、
"同じ様に動かそうとする両側手の運動を抑制、調整"
しなければなりません。
その際に
脳梁が大きく関与します。
1)脳梁
機能:
脳梁は、左脳と右脳を結ぶ(連絡する)
障害が生じると:
左手と右手の動きが一致しない。(エイリアンハンド症候群)
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まとめ
最後まで読んで頂き有難うございました。
記事の内容は理解して頂けたでしょうか?
物品や道具を使用する際は、多くの脳領域が関与します。
脳卒中の対象者にリハビリテーションを提供するのに、骨格筋や機能的異常の理解をする事は、もちろん重要ですが、脳内の神経ネットワークを理解する事も重要になってくると思います。
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