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管理人のYudai(@yudai6363)です。
今回は、高次脳機能障害の中でよく生じる障害の一つ
解説をしていきたいと思います。
目次
記憶とは
人の脳は、誕生した習慣から膨大な量の情報と接しています。
それは、自分自身の経験や周囲に対しての出来事などです。
その経験した事や、学んだ事を頭の中に留めて、必要な時に思い出すのが記憶です。
つまり、"過去の経験を頭の中に留め、時に応じてその経験を思い起こす機能"です。
記憶の過程
記憶の働きは、単一では無く、主に3つの過程から成り立っています。
コンピューターに例えると、イメージがしやすいと思います。
・記銘: データーの入力作業
・保持: データーの保存でハードディスク
・再生: データーを検索し取り出す
記憶の分類
記憶の分類として
・時間軸に沿った記憶
・内容による記憶
に分ける事が出来ます。
▶︎時間軸に沿った記憶
時間軸に沿った記憶では、未来の展望記憶。
過去を想起する時の把持時間の短い順に即時記憶→近時記憶→遠隔記憶に分類されます。
▶︎▶︎展望記憶
展望記憶とは、意図した予定を遂行しよとする際に必要となります。
"未来の記憶を保持し行動するといった予定の記憶"です。
▶︎▶︎即時記憶
"数秒から数十秒の記憶"です。
▶︎▶︎近時記憶
"数分・数時間から数ヶ月の記憶"です。
▶︎▶︎遠隔記憶
"数年前から数十年前の記憶"です。
▶︎内容による記憶
記憶は、短期記憶と長期記憶に分類が出来ます。
短期記憶は、作業記憶に。
長期記憶は、陳述記憶と非陳述記憶に分類する事が出来ます。
▶︎▶︎作業記憶
作業記憶はワーキングメモリーとよばれています。
"一時的に必要となる記憶"です。
▶︎▶︎陳述記憶
"知識や経験などの記憶内容がイメージでき、言葉で表現できる記憶"です。
さらに、陳述記憶は、意味記憶とエピソード記憶に分類出来ます。
▶︎▶︎▶︎意味記憶
"単語や数字、概念など、これまで学んできた知識的な記憶"です。
▶︎▶︎▶︎エピソード記憶
"自分自身が体験・経験した出来事の記憶"です。
▶︎▶︎非陳述記憶
"無意識でも身体が動く様な技量や経験などで、言葉で表現出来ない記憶"です。
さらに非陳述記憶は、手続き記憶・プライミング・条件付けに分類出来ます。
▶︎▶︎▶︎手続き記憶
"経験を繰り返し行う事で永久的に覚えている記憶"です。
▶︎▶︎▶︎プライミング
"前に入力された情報が、その後の情報に影響を与える記憶"です。
最後の部分だけ、アンパンマンが「アンパンソン」になっています。
大抵の人は最後の文章もアンパンマンと言っていると思います。
これは、前に入力された情報が記憶され、自分の意思よりも記憶の方が先に入力されるからであり、これをプライミング記憶といいます。
▶︎▶︎▶︎条件付け
"経験や体験の繰り返しにより本来結びつかない刺激に対して、新しい反応が形成される記憶"です。
記憶の機能局在
記憶形成の全ての過程において、大脳辺縁系が関与しています。
特に側頭葉内側部に存在する海馬体と扁桃体は全ての大脳皮質感覚連合野からの情報が収束している領域です。
大脳辺縁系には、Papez回路とYakovlew回路が存在しています。
・記憶の回路と呼ばれるPapez回路があり、海馬体が関与しています。
・情動の回路と呼ばれるYakovlew回路があり、扁桃体が関与しています。
▶︎Papez回路
・Papez回路
海馬体→脳弓→乳頭体→視床前核→帯状回→海馬傍回
・機能
エピソードを再現する為の情報が含まれています。
▶︎Yakovlew回路
・Yakovlew回路
扁桃体→前頭葉眼窩皮質→マイネルト基底核→視床内側核がブローカー対角帯核を介して海馬と連絡します。
・機能
情動記憶に関与しており、記憶の強化に働きます。
記憶障害
高次脳機能障害においての記憶障害(健忘)は以下の分類に分ける事が出来ます。
▶︎全健忘
"全ての出来事を想起する事が困難な状態"です。
▶︎部分健忘
"思い出す事が可能な情報と、思い出す事が困難な状態が混在する状態"です。
▶︎時間軸の分類
また、時間軸で捉えると、以下に分類する事が出来ます。
▶︎▶︎前向性健忘
障害時点以降の情報の記憶障害を前向性健忘といいます。
前向性健忘は、近時記憶の記銘力障害です。
▶︎▶︎逆行性健忘
障害時点以前の情報の記憶障害を逆行性健忘といいます。
逆行性健忘は、遠隔記憶の想起障害であり、障害時に近い出来事ほど忘却されやすいです。
評価
評価の流れとして、MMSEなどのスクリーニング検査を実施し、減点項目より傾向をみていきます。
また、面接(会話)や観察場面で可能な限り、対象者の行動を記録し評価する事も重要となります。
これらから得られた情報を基に、詳細な検査方法を選択し実施していきます。
主な評価ツールとして、以下が挙げられます。
エビデンスに基づいた介入
記憶障害に対する介入では、以下の事が述べられています。
▶︎代償手段を用いる
♦代償手段も用いた介入(gradeB)
・メモやスケジュール表、スマートフォンなどの記憶障害を補う補助手段の活用が勧められる。
・特異的な技術の習慣訓練や領域特異的な知識の獲得を目的とした訓練の方が、記憶能力そのものを改善させるよりも効果的である。
引用:Cognitive rehabilitation for memory deficits following stroke.
▶︎手続き記憶を用いる
♦手続き記憶を用いた介入(gradeB)
・手続き記憶学習(運動学習)や失敗の無い学習を行う事が勧められている。
引用:Implicit learning in memory rehabilitation: a meta-analysis on errorless learning and vanishing cues methods.
▶︎家族支援
♦家族支援(gradeB)
・脳卒中後の認知障害の有無や程度をスクリーニングし、その情報を家族に伝える事で、家族の介助負担度を軽減する事が出来る。
引用:Evaluation of cognitive assessment in stroke rehabilitation
また、発症から半年程度経過すると著明な機能の改善は認められなくなります。
アプローチとして、代償方法の学習、障害の理解を進める方向に転移していきます。
また、長期的な支援体制を整えるのも重要です。
臨床での一例
代償手段を用いた介入の一例を紹介していきます。
▶︎環境調節
タンスや引き出しに入っているものが何かわかるようにラベルを貼ったり、部屋やトイレに目印を貼ったりすなどして環境調節を実施します。
▶︎外的代償法
メモリーノートやスマートフォンなど記憶するべき内容を、それらに書き込んだりして保存する方法です。
メモリーノートには覚えるべき必要な項目を記載するだけでは無く、日記として記録する事でエピソード記憶の改善にも繋がるとされています。
アラームやタイマーなどの道具の特性を用いて、それらを手掛かりとして、すでに貯蔵してある情報源で確認する方法です。
まとめ
今回は高次脳機能障害の「記憶障害」についてまとめました。
記憶するにあたっての過程や、分類を明確にする事が記憶障害を理解するうえで重要になります。
記憶障害に対してのアプローチとして、代償手段や補助手段を使用した介入が勧められます。
また、長期的な期間を見て、社会や家族支援を整える事が重要です。
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