半側空間無視を理解する。〜症状・評価・エビデンスに基づいた介入〜
Pocket

ウェブページを閲覧して頂き有難うございます。

 

管理人のYudai@yudai6363)です。

 

 

今回は、高次脳機能障害の一つ

解説をしていきたいと思います。

半側空間無視とは

 

半側空間無視は、"空間に注意を向ける事に困難を示し、対象物や空間そのものを気付けずADLを阻害する"障害です。

 

 

▶︎概要

 

半側空間無視の定義として、"様々な刺激に対する反応や行動に対して、要素的な感覚や運動障害を持たないのに、大脳病巣の反対側に与えられた刺激に気づかない状態"とされています。

 

要するに、"病巣の反対側にある刺激に気づかない現象であり、また運動や知覚の障害によらないもの"となります。

 

 

 

▶︎頻度

 

半側空間無視は、右半球損傷者に多いとされています。(左半球損傷にも起こり得る。)

 

 

頻度として

 

半球損傷において、急性期では70〜80%程度であり、慢性期では40%前後

・左半球損傷においては、全体で0〜38%程度


とされています。

 

 

 

 

半側空間無視のメカニズム

 

▶︎空間性注意

 

一般的に右利きの場合、右半球が空間性注意に対する優位半球となります。

"右半球は、左右空間に関与"

"左半球は、右空間に関与"

しています。

 

 

右半球損傷の場合は、左半球が残る為、右の空間性注意にしか働きません。


左半球損傷の場合は、残っている右半球が左右両側の空間性注意に働きます。

 

よって「右半球損傷者=左半側空間無視」が生じるとされています。

 

 

 

 

▶︎▶︎空間性注意ネットワーク

 

空間性注意ネットワークに関与する領域として、

・綱様体賦活系

・帯状回

・頭頂後頭部

・前頭眼野

があります。

 

 

これらのネットワークがそれぞれの機能を有しながら、注意を選択的に向けたり、切り替えたりしています。

 

このどれか1つでも障害されると、空間性注意ネットワーク全体が障害されます。

 

 

 

綱様体賦活系:

意識や覚醒を担う部分であり、注意の根幹となります。

 

 

 

帯状回:

感情形成と処理、学習と記憶の関わりを担う部分です。

運動時に感情などの情動面を配慮した動機付けを伴う注意喚起に関与しています。(食事や家族の声かけなどの外的刺激)

 

 

 

前頭眼野・後部頭頂葉:

意識下での運動の自発性に関与しています。(目的を伴った探索活動など)

 

 

 

視床・上丘・線条体:

大脳皮質を使う為の情報入力や意識にのぼりやすい感覚入力など、今までに慣れた運動や行動を促します。

 

 

 

▶︎背側・腹側性注意ネットワーク

 

空間に対する注意の焦点化には、2つの神経ネットワークが関与しています。

 

それらの神経ネットワークに障害が生じると、半側空間無視が出現します。

 

 

神経ネットワークには、「腹側注意ネットワーク背側注意ネットワーク」が存在しています。

 

image:Dorsal and Ventral Attention Systems

 

 

 

▶︎腹側注意ネットワーク

側頭葉・頭頂葉ー前頭葉の機能的連結により外発的に生じた事象を検出し意図には依らない受動的注意を担います。

 

つまり、突然現れた変化やアクションに対して自分の意思とは関係なく注意が向く機能とされます。(例:大きな音に対して目を向ける)

 

 

 

▶︎背側注意ネットワーク

前頭葉ー頭頂葉の機能的連結により、意図的に注意を割り当てる能動的注意を担います。

 

つまり、ある動作を遂行する為に積極的にその動作に意識し集中する機能とされます。(例:パソコン作業に注意を向ける)

 

 

 

 

半側空間無視の分類

 

半側空間無視は、"何の左側を見落としているか"という観点で「自己中心空間物体中心空間」の障害に分類する事が出来ます。

 

 

▶︎自己中心空間の障害

 

自己中心空間の障害では、"対象者の正中矢状面より、左側にある刺激に気づかない現象"です。

 

主に、左空間への探索の障害を反映していると考えられます。

 

 

日常生活では、

・食事において左の器に手をつけない。

・左側のリモコンやナースコールを見つけられない。

などが観察でみられます。

 

 

 

▶︎物体中心空間の障害

 

物体中心空間の障害では、"対象者と対象物の位置関係が分からず、その左部分を見落とす現象"です。

 

主に、対象を固定する段階での障害と考えられます。

 

 

日常生活では、

・食事において全ての器に手をつけるが、器のなかで左側を食べ残す。

・数字を読み間違える。(65・89と読む)

などが観察されます。

 

 

 

 

身体に関わる空間無視

 

対象者の身体にも空間無視が生じる事があります。

 

主に「身体無視・運動無視・運動消去現象」に分ける事が出来ます。

 

 

▶︎身体無視

 

身体無視とは、"運動麻痺に関係なく、その存在またはその状態に気づかない現象"です。

 

主に、身体の片側に対する認識が低下する為に生じると考えられています。

 

 

日常生活では、

・車椅子時に左手が大腿部の下敷きになっても気がつかない。

・顔を拭く際に、左側の拭き残しがある。

・左側のヒゲの剃り残しがある。

などが観察されます。

 

 

 

▶︎運動無視

 

運動無視とは、"麻痺がごく軽度であるにも関わらず左上下肢を動かさない現象"です。

 

 

日常生活では、

・歩行時に左下肢の運びが不十分。

・左手を振らずに歩く。

・両手を使用する場面において、左手を使用しない。

などが観察されます。

 

 

 

▶︎運動消去現象

 

運動消去現象とは、"左手のみの片手を使用した動作であれば遂行可能だが、両手を使用すると次第に左手の動きが止まる現象"です。

 

運動無視と異なる点として、「左手の片手のみなら使用可能」という事です。

 

 

 

 

空間無視によるADL障害

 

空間無視が生じると、日常生活で以下の事が観察されます。

 

 

▶︎食事:

・右側にある器にしか手をつけない。

・それぞれの器の左側を食べ残す。

 

 

▶︎更衣:

・服の上下左右を確かめずに着ようとする。

・右半身だけ着衣し「着れた」という。

 

 

▶︎整容:

・顔を拭くとき、右側だけ拭く。

・髪をとくとき、右側だけとく。

 

 

▶︎排泄:

・トイレットペーパーなど左側にある時に見つけられない。

・左側の下衣が上がりきらない。

 

 

▶︎入浴:

・頭や体の左側を洗う事ができない、もしくは不十分。

 

 

▶︎移動:
・車椅子ブレーキの左側を忘れる。

・左足をフットレストに乗せない。

・車椅子の駆動中に左側にある障害物にぶつかる。

 

 

 

 

半側空間無視の評価

 

▶︎BIT

 

半側空間無視の評価では、"BIT"が一般的に用いられています。

 

 

BITの特徴として、

・机上検査で行う「通常検査」

・日常生活場面から想定された「行動検査」

で構成されているのが特徴です。

 

 

 

 

▶︎CBS

 

半側空間無視の観察評価として"CBS"が用いられています。

 

評価方法として、セラピストの観察評価対象者の自己評価で点数をつけます。

 


image:半側空間無視

 

 

 

 

エビデンスに基づいた介入

 

半側空間無視に対するリハビリテーションは、"一般的に機能改善の効果はあるが日常生活レベルへの般化には十分な根拠が無い"とされています。

 

介入において大事な事は、「対象者が自ら左方へ注意・関心を向ける事」です。

 

対象者によって半側空間無視の特徴は様々であり、ひとつの介入が対象者にとって効果的であっても、他の対象者には効果が得られない事もあります。

 

その為、対象者の半側空間無視の特徴を理解・把握する事が介入行う上での前提となります。

 

 

▶︎トップダウンアプローチ

 

▶︎▶︎視覚走査訓練

 

視覚走査訓練(グレードB)は、無視空間にある物体の先端に視線を移動させて探索させる訓練です。

 

 

視覚走査訓練の基本と注意点は、以下に示しています。

・左側を見るように手がかりを出す。

・探索すべき空間フレームの左端に目印をつける。

・対象者に合わせて刺激の密度・難易度を調整する。

・右側の標的に反応したら、視界から取り去る。

・すぐに探索をやめない工夫をする。

・課題に適した探索を組織化する。

ADLに即した課題も取り入れる。

・繰り返し反復する。

 

 

 

▶︎ボトムアップアプローチ

 

▶︎▶︎リズム順応

 

視覚と運動の協調に介入する試みがプリズム順応(グレードC1)であり、半側空間無視への応用が試みられています。

 


プリズム順応の方法を以下に示します。

 

外界が10度右方にシフトして見えるプリズム眼鏡をかけ、標的を右示指で素早く指し示す動作を50回繰り返すという単純かつ短時間で実施可能な方法となっています。

 


image:高次脳機能障害 第2版 石合 純夫 著 P173

 

 

 

▶︎ADLアプローチ

 

CBSなどで、生じたエラーが出やすいADL場面を繰り返して動作学習を行い定着させていくアプローチです。

 

また、対象者や家族に半側空間無視の理解を図り、対象者のADL場面での重要度や必要性、問題点を共有する事でより有効的な介入を行う事が出来ます。

 

 

 

まとめ

半側空間無視とは、「ただ単に左側を無視する」といった現象で捉えるのでは無く、常に対象者を観察する必要性があります。


まず対象者がどの様な場面でエラーが生じるのかを評価し、問題点を抽出します。

介入にあたり、「どこの損傷が大きいのか」「どこの経路を使って注意を向けているのか」を考えながら介入する事が大切です。

また、損傷した機能を改善する事も大切ですが、残された残存機能を最大限に生かした介入も非常に大切です。

 

 

 

 

参考書籍

今回の記事をまとめるにあたり、以下の書籍を参考しました。

 

 

 

最後まで、閲覧して頂き有難うございます。

 

もし良かったら、Instagram・Twitterのフォローをお願いします。 

 

※ウェブページの見出しから、各リンクへのアクセス可能となっています。

 

 


 

 

関連記事