
ブログを読んで頂き有難うございます。
今回の内容は、
上肢運動麻痺に対する電気刺激療法
についてまとめました。
目次
電気刺激療法とは
簡単に説明すると電気刺激療法とは、
"麻痺側に電流を流す事によって神経の興奮などの作用を活発化し治療効果を得ようとする"
ものです。
主な役割として、
・筋の萎縮予防や維持
・脳の学習に伴う可塑性の修復
があります。
電気刺激療法の種類と目的
電気刺激療法は、大きく分けて3つの電気刺激があります。
・治療的電気刺激(TES)
・機能的電気刺激(FES)
・経皮的抹消神経電気刺激(TENS)
治療的電気刺激(TES)
随意筋電位の検出が出来ない重度麻痺は、長期の弛緩により筋萎縮が進行している場合が多いです。
更に電気刺激を与えても収縮が発現しない場面もあります。
この様な場合に筋や抹消神経に電気刺激を与え、筋収縮の促進や筋力増強、痙縮などの不随意収縮を抑制するなどを目的としています。
機能的電気刺激(FES)
電気刺激によって得られる筋収縮を実用的動作として使う事が目的としています。
日常生活の中で握る・離すといった動作機能の補完・再建する事が目的とされています。
経皮的抹消神経電気刺激(TENS)
電気刺激による疼痛・除痛効果を目的とします。
痛みのような侵害刺激は、主な直径の細い繊維を介して脊髄後角へ入ります。
電気刺激により興奮する直径の太い神経繊維は、後角で細い神経繊維で介する痛みの感覚の伝達を遮断し疼痛・除痛効果が得られます。
参考文献:リハビリテーションにおける電気刺激法の展望
リハビリテーションにおける電気刺激の応用
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神経筋電気刺激(NMSE)
TES・FESの電気刺激を総称して、
神経筋電気刺激(NMES)
と呼びます。
NMESの効果は
遠心性効果として、
主に筋収縮の誘発で骨格筋の筋力増強など
求心性効果として、
脊髄の反射抑制や促通に作用し、痙縮の抑制など
があります。
参考文献:神経筋電気刺激(NMES)とストレッチングの同時施行は筋伸張性を短時間で向上させる
電気刺激療法の効果に影響する因子
効果に影響する因子として、
・パルス幅
・周波数
・刺激強度
・電極の大きさ
などが挙がります。
パルス幅
パルスとは、
"短時間で流れる電流"
の事をいいます。
パルス幅とは、
"パルスをどれだけの時間照射するか"
です。
※パルス幅はパルス時間ともいいます。
単位はμsec(100万分の1秒)やmsec(1000分の1秒)を使います。
また、パルス幅を調整するにあたり、下のイラストをみて下さい。
このイラストは神経繊維や筋を興奮させる為に必要なパルス幅と刺激強度の関係を表しています。
庄本らの研究では、
Aβ感覚に刺激をしたい場合はパルス幅を50〜100μsec
筋収縮に刺激させたい場合にはパルス幅を200〜300μsec
脱神経筋の収縮を起こすにはパルス幅を10msec
にする必要があるといわれます。
image:TheWalkAideSystem
注意する点として、
パルス幅や電流強度をあげると抵抗が増大し、科学火傷や皮膚トラブルが生じる恐れがあります。
周波数
周波数とは、
"1秒間に何回パルスを送れるか"
の数字です。
単位はHz(ヘルツ)を用いていますが、機器によってはPPSと記載されている場合もあります。
10Hzなら1秒間に10回パルスを送ります。
100Hzなら1秒間に100回パルスを送ります。
また、周波数を調整するにあたり、下のイラストは電気刺激と筋収縮を表しています。
1Hzだと、1秒間に1回の単収縮が起こります。
それが20Hz以上になると、強縮が起こります。
筋収縮を目的としたFESは20Hz以上の周波数を使用する事が多いです。
また、50〜100Hzでは収縮力に差はないと言われています。基本、電気刺激の頻度が多いと筋疲労は早くなります。
その為、長時間使用するのであればHzを落とす事が望ましいです。
刺激強度
刺激強度は
"刺激に対する電流の強さ"
を指します。
だいたいの場合をA(アンペア)で表記しています。
なので、30mA ・200μses・ 50Hzで刺激する場合、
30mAの強さの電流を、1回につき100万分の200秒それを50/秒、刺激するという事になります。
電極の大きさ
まず、電極を皮膚に貼るうえで、皮膚と電極の抵抗を落とす配慮(角質除去)が必要です。
理由として、大量の脂肪が分布する場合、電流密度が達し得ず興奮を引き起こさない場合があるからです。
また、小さい方の電極は電流密度が高くなり、大きい方の電極では電流の分布が広がり電流密度は低くなります。
アプローチする筋の大きさに合わせて、電極を選ぶ事が大切となってきます。
image:オージー技研株式会社
モーターポイントの分布
下のイラストは上肢の各筋のモーターポイントです。
モーターポイントは、筋本体よりも神経繊維細胞の興奮閾値が低い為、このポイントをしっかり刺激する事で、痛みなどをと伴わずに刺激を行う為に重要となります。
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電気刺激療法の禁忌
電気刺激の禁忌として、
・心疾患を患っている対象者
・ペースメーカーなどの体内に医療機器を使用している対象者
・悪性腫瘍及び疑いがある対象者
・感染症、骨髄炎、結核を患っている対象者
・妊婦
・幼児など意思表示が困難な対象者
があります。
禁忌部位として、
・心臓の上
・目
・頸動脈洞、咽頭
・はん痕、発疹のある部位
などです。
参考:特定保守管理医療機器電気刺激装置GD–611IVESより
電気刺激療法を用いた介入
痙縮の軽減
痙縮に対して、TENSを施行する事が勧められています。
効果として、
前腕屈筋・伸筋への交互刺激(40Hz・15回・60分)に手指屈曲・伸展課題を加える事で痙縮、手指機能が10日後においても改善される。
といわれています。
文献:Neuromuscular electrical stimulation improves severe hand dysfunction for individuals with chronic stroke: a pilot study.
麻痺筋の促通
BRSⅡ〜Ⅲ程度の重度上肢麻痺では、痙縮の亢進及び随意的な手指の伸展が困難となります。
それに対して、NMSEを併用して手指伸筋群の筋出力不足を補う事で、課題指向型アプローチを実施する事が可能となります。
また、HANDS療法のようにIVESを使用して課題を行う事で能動的な練習を実施する事が可能となります。
少し古い動画になりますが、こちらの動画が参考になります。
sutefun01より
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まとめ
今回、電気刺激療法についてまとめました。
電気刺激療法を行うにあたり、目的やそれぞれの種類を理解する必要性があります。
また、どの様な効果があるのかを理解した上で介入する事が重要です。
本日も最後まで、見て頂き有難うございました☺️
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