脳卒中の予後予測を見据えたアプローチ〜上肢〜
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本日もブログを読んで頂き有難うございます。

今回の記事の内容は、

予後予測を見据えたアプローチ

となります。

 

はじめに


臨床において、「予後予測」を知る事はとても大事な事だと感じています。


予後予測が大切な理由として、

・CLのおおまかなゴールをある程度見据えて、CLと目標設定を行う事が出来る。
・介入する中でどこに対してアプローチするか、優先順位をつける事が出来る。

などがあります。

ただし、予後予測はあくまでも「確率的な機能予後」に過ぎない。
という事を頭の隅に入れておいて下さい。

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上肢機能予後予測

 

1)臨床所見からの予後予測

"中等度以下の麻痺では予後が悪い。"

Nakayamaら)が示したCopenhagen studyの結果では、421名の脳卒中対象者を発症から1週ごとの手指の機能を評価し、上肢機能の回復を報告しています。

入院時の上肢及び手指の機能を"Scandinavia Stroke Scale "で評価し、
手指及び上肢は2点以下:severe重度
手指及び上肢は3点以上5点未満:mild軽度
手指及び上肢は6点:no paresis麻痺なし

の3群に分類して評価を行いました。

4週間後に実用手までに回復したのは、
入院時重度麻痺では11%
軽度麻痺では77%

廃用手となったのが、
入院時重度麻痺では20%
軽度麻痺では5%
であったと報告しています。


※この研究では、重度麻痺を呈した約50%のCLが死亡しており、実際は廃用手の割合が多いとされています。



"Scandinavia Stroke Scale"


引用:脳卒中機能評価・予後予測評価マニュアル
参考文献:When Does Return of Voluntary Finger Extension Occur Post-Stroke? A Prospective Cohort Study


また、doumeiら)は発症後1ヶ月の時点で
手指のSIASが3であれば50%の確率
4であれば80%の確率で実用手となる。
0の場合は70%の確率では廃用手になる。
と述べています。
参考書籍:脳卒中機能評価・予後予測評価マニュアル

 

"発症から72時間以内〜4週以内に手指の伸展が認められる。
又は、
中等度から良好な下肢の機能。
半側空間無視が認められない。
感覚機能が正常。
この3つの症状に値するCLは94%の確率で、6ヶ月後に上肢機能が改善される。"

Wintersら)の研究によると、脳卒中発症後8日±4日の時点で麻痺側手指の随意伸展が見られなかった100名のCLのうち45名は発症後の6ヶ月の時点でARAT10点以上を達していた。これらのCLにおいて手指の随意伸展の回復がみられた期間の中央値は4週であった。100名全てのCLが評価期間である4週間で、随意伸展は達成されたわけでは無かった。①中等度から良好な下肢の機能②半側空間無視が認められない③感覚機能が正常の3つ条件が揃っているCLは、脳卒中発症後6ヶ月の時点で、上肢機能の回復が0.94の割合で認められた。と述べています。


引用:When Does Return of Voluntary Finger Extension Occur Post-Stroke? A Prospective Cohort Study

 

2)脳画像からの予後予測


"皮質脊髄路の残存量が多いと予後が良い。"

脳画像の観点から観察するべきポイントとして、

皮質脊髄路の損傷の程度

が挙げられます。

その際に重要となる画像は
Diffusion tensor imaging(DTI)
という特殊なアルゴリズムを用いた画像分析方法です。

koyamaら)は、発症前のADL自立していた初期の脳出血対象者に発症後14〜18日の間に撮影したMRIのDTIから大脳後脚の残像量を抽出し、健側との左右比を抽出しました。

結果、発症初期の大脳後脚の残存量は、回復期リハビリテーション病院からの退院時(2〜7ヶ月)の上肢と手指のBRSと高い関連性を認めたと報告しています。

この事から、皮質脊髄路の残存量は、上肢の予後に関連しているという事が分かっています。
参考文献:Relationship between diffusion-tensor fractional anisotropy and long-term outcome in patients with hemiparesis after intracerebral hemorrhage.

 

3)血管内治療での予後予測

エビデンスは出ていませんが、急性期に血管内治療を受けたCLは予後が良いとの報告があります。
その為、セラピストは急性期にどの様な治療をしてきたか確認する必要があります。

血管内治療の一例

・脳梗塞急性期再開通療法
・頸動脈ステント留置術
・脳動脈瘤コイル塞栓術
・頸動脈的・経静脈的塞栓術
・腫瘍血栓塞栓術
・選択的動注化学療法
があります。

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リハビリテーションにより
予後が変わる


よく、こんな予後予測を聞きませんか?

発症から6ヶ月経過すると、「プラトー」に達するため上肢麻痺は回復しない。

果たして本当にそうなのでしょうか?

実際にこんな文献があります。
Swayneら)は「運動麻痺回復ステージ理論」というものを唱えています。


引用:脳卒中運動麻痺回復可塑性理論とステージ理論に依拠したリハビリテーション

回復のメカニズムは、
1st stage recovery
2nd stage recovery
3rd stage recovery
の大きく3つの段階に分けられています。

1st stage recovery:発症〜3ヶ月
この時期では、残存している皮質脊髄路を刺激しその興奮性を高める事で麻痺の回復を促進できる時期です。
その興奮性は急速に減衰して3ヶ月までには消失する。といわれています。

2nd stage recovery:3ヶ月〜6ヶ月
この時期では、皮質間の新しいネットワークの興奮性に依拠する時期となります。
このメカニズムの再構築は3ヶ月がピークとなり、回復のメカニズムは皮質間の抑制が解除される事で機能します。
また6ヶ月でこの機能は消失する。といわれています。

3rd stage recovery:6ヶ月〜
この時期では、2nd stage recoveryまでに再構築された新しい代替のネットワークを頻回に使用する事でこの回路のシナプス伝達効率が良くなり、運動出力のネットワークが一層強化される時期といわれています。


つまり、6ヶ月以降もシナプスの伝達効率が向上すると述べており、発症から6ヶ月経過すると、「プラトー」に達するため上肢麻痺は回復し
ないという予後は妥当ではないと考えられます。

また、Wolfは発症後3–9ヶ月の間にCI療法を実施した対象者と、15–21ヶ月にCI療法を実施した対象者の間で終了から1年後の上肢機能の予後を比較したところ優位な差は認められなかった。との報告があります。

引用:The EXCITE stroke trial: comparing early and delayed constraint-induced movement therapy.

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では、上肢の運動麻痺による機能障害において、効果的なリハビリテーションの介入はどのようなものがあるのでしょうか?

 

 

上肢運動麻痺へのアプローチ


Peterら)の研究によると、上肢運動機能が向上した介入法をランダマイズ試験を含めたシステマティックレビューを統合し分析しました。

下のイラストは、脳卒中後の上肢運動機能を向上させる為の訓練方法を示しています。


効果がある介入法として、

・CI療法
・電気療法
・ロボット療法
が効果あると示しています。

※運動イメージ想起能力は、被験者数も少ない為、留意する必要があると思います。
引用:Motor recovery after stroke: a systematic reviewより一部編集

 

 

 

発症時期に合わせたアプローチ

 

Hatemら)は、発症からの病期・手指の運動の有無・痙縮の高低によって、上肢のリハビリテーション及び、補助的リハビリテーション技術が推奨されています。

引用:Rehabilitation of Motor Function after Stroke: A Multiple Systematic Review Focused on Techniques to Stimulate Upper Extremity Recovery.より一部編集

 

 

 

まとめ


今回、上肢の予後予測に対して文献を用いて述べていきました。

予後予測するうえで、重要となるポイントは
・臨床所見からの判断
・脳画像を理解する
・リハビリテーションの状態から判断
する点となります。

また介入するにあたり、対象者の経過を確認しエビデンスに基づいた介入をする事が大切となります。

最後まで、読んで頂き有難うございました。

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