痙縮に対してのリハビリテーション〜メカニズムを理解する〜
Pocket

今回の記事の内容は、
「痙縮」に対して学んでいきます。


はじめに


痙縮は脳卒中、頭部外傷や脊髄損傷などの疾患によって生じます。

また、痙縮は「上位運動ニューロン症候群」による症候の1つとされています。

上位運動ニューロン症候群の所見には、
陽性徴候
陰性徴候
に分ける事ができます。

陽性徴候
伸張反射の亢進・筋緊張の増加・腱反射の亢進・クローヌスといった所見及び痙縮異常姿勢・病的共同運動などがあります。

陰性徴候
運動麻痺、筋力低下を認め、運動は巧緻性を欠け、労力を要します。

 

 

 

 

痙縮とは

 

一般的な痙縮の定義として、1980年にLanceが提唱した、

「痙縮とは、上位運動ニューロン症候群の一要素であり、伸張反射亢進の結果として生じる。腱反射亢進および緊張性伸張反射(筋緊張)の速度依存性増加を特徴とする運動障害である。」

が有名です。

臨床場面では、痙縮とは関節を他動的に急速に伸張した時に、始め抵抗があるが伸張に伴い次第に抵抗が消失する特徴があります。(折りたたみ現象)

痙縮は伸張反射姿勢反射に関与し、姿勢の変換時及び運動時によって変化します。

 

 

 

 

伸張反射


伸張反射とは、筋が受動的に引き伸ばされると、その筋が収縮する反射をいいます。


筋の伸張には、求心性繊維により脊髄に伝えられ、脊髄では求心性繊維がα運動ニューロンと興奮性に結合して筋が収縮します。

また、求心性繊維には、Ⅰa群繊維とⅡ群繊維があります。
Ⅰa群繊維は、伸張速度に比例し、Ⅱ群繊維は、筋の長さに比例します。

伸張反射の制御には、筋紡錘の錘内筋繊維の支配を行うγ運動ニューロンが大きな役割をしています。

γ運動ニューロンは、錘内筋繊維の両端にシナプス結合し、錘内筋繊維に対し遠心性の支配を行います。

役割として、

"筋の伸張速度や筋の長さの変化に対応し、筋紡錘の感受性をコントロールし、αニューロンと共に運動の調節を行う。
(α―γ関連)"


事が挙げられます。

スポンサードリンク


【具体的なα―γ関連のメカニズム】

筋紡錘は、錘内筋繊維が遠心性の支配を受ける事で、筋紡錘自身の感度を中枢性に変化させる事が出来ます。

反対に錘内筋繊維の適度な収縮が、筋紡錘内の伸展受容器の閾値を変える事ができ、錘外筋繊維の筋緊張をコントロールしています。

 

 

 

 

姿勢反射


姿勢調節は主に脳幹にある姿勢反射中枢で行われます。


また、小脳・大脳は脳幹の姿勢反射を調整する姿勢制御に関与しています。

 

姿勢調節には、
・フィードバック式調節
・フィードフォワード式調節
があります。

 

フィードバック調節の代表例として、
前庭反射と頸反射があります。


フィードフォワード式調節は、
これから行う運動に伴う外乱を事前に予測し補正する機能です。

このフィードフォワード式調節が筋緊張の調節に関与しています。

 

 

 

 

 

痙縮に関与する上位運動ニューロン


痙縮の定義で述べたように、痙縮は、上位運動ニューロンと深い関係性があります。

上位運動ニューロンは、大脳皮質運動野や脳幹から始まり、運動情報を下位運動ニューロンに伝達する経路です。
また、脊髄を制御する役割もあり、6つの経路に分類する事が出来ます。

この6つの経路の中で、痙縮に関与するのが、
前庭脊髄路
網様体脊髄路
になります。

スポンサードリンク



 

痙縮についての神経経路はこちらを参照する事をお勧めします。

痙縮について 〜神経経路〜

スポンサードリンク


 

 

 

痙縮のメカニズム


痙縮のメカニズムは、まだ詳細が不明で様々な原因が考えられています。


様々な説がある中で、一番可能性が高いといわれているのが、


γ運動ニューロンの亢進説

と言われています。

 

「γ運動ニューロンの亢進説」のメカニズムとして、
脳卒中などの錐体路や錐体外路を損傷されると、大脳皮質からの抑制が遮断され、錐体外路の活動が過剰に高まります。
その結果、γ運動ニューロンが常に興奮してしまい、α運動ニューロンも興奮し続け、筋緊張が亢進し続け、痙縮が生じるというメカニズムが生じます。

 

 

 

 

痙縮に対してのアプローチ


脳卒中ガイドラインの痙縮に対するリハビリテーションの項目です。


片麻痺の痙縮に対して、ダントロレンナトリウム・チザニジン・バクロフェン・ジアゼパム・トルペリゾンの処方を配慮する事が勧められる。(grade:A)


顕著な痙縮に対しては、バクロフェンの髄注が勧められる。(grade:B)

 

痙縮による可動域制限に対し、フェノール・エチルアルコールによる運動点あるいは神経ブロック(grade:B)
およびボツリヌス療法(grade:A)が勧められる。

 

痙縮に対し、高頻度のTENS(経皮的電気刺激)を施行する事が勧められる。(grade:B)

 

慢性期片麻痺患者の痙縮に対するストレッチ、関節可動域訓練が勧められる。(grade:B)

 

麻痺側上肢の痙縮に対し、痙縮筋を伸張位に保持する装具の装着またはFES(機能的電気刺激)付装具を配慮しても良い。(grade:C1)

 

痙縮に対する冷却または、温熱の作用を配慮しても良いが、十分な科学的根拠は無い。(grade:C1)

 

 

近年の痙縮に対するアプローチとして注目されているのが、

振動刺激痙縮抑制法:DAVS)

です。


一般的に、振動刺激には電気マッサージャーを使用します。

これは、筋緊張を低下させる手法であり、100Hz〜200Hzの周波数の振動刺激を骨格筋に振動を与えます。

刺激開始時は、筋が強い収縮を示すが、数分の刺激を継続する事により刺激前に比べ明らかに筋緊張の低下が認められます。


image:DaitoのHPより

 

 

 

まとめ


今回、痙縮についてのメカニズムと介入法についてまとめました。

痙縮は、筋硬結、萎縮や拘縮などの関節の構造変化が生じ、最終的に機能障害が生じ対象者の生活に支障をきたします。
機能障害が生じる前に、痙縮に対しての介入を行っていく必要性があります。

 

 

 

参考文献

 

スポンサードリンク



痙縮の病態整理
筋緊張のコントロール
麻痺肢への新たな振動刺激療法の機序と効果
上肢運動障害の作業療法