
今回は、「拘縮」についてまとめていきます。
この記事を読めば、
"拘縮の責任病巣・メカニズム・アプローチ法"を学んでいきます。
目次
はじめに
関節可動域(以下:ROM)障害は、理学療法・作業療法ともに上位に挙がっています。
また、臨床におけるROM制限の発生状況の実態検査によれば、対象となった144名の全ての症例になんらかのROM制限を認め、しかも多関節での制限が7割を占めているとの報告があります。
また、ROM制限の原因として、拘縮や強直、痙縮などによる筋収縮、さらに関節内遊離体や脱臼・偏位など、様々な原因で発生します。
その中で、セラピストによって改善が期待できるのは、拘縮と筋収縮が原因で生じたROM制限です。
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ROM制限の原因
1)臨床でのROM制限
臨床におけるROM制限は、
・皮膚や骨格筋、関節包などの関節周囲軟部組織の原因
・骨、軟骨といった関節構成体そのものの原因
・関節内遊離体や脱臼に伴う骨偏位や強直による原因
にわける事が出来ます。
これらの原因の中でセラピストによって改善できるものは、
"関節周囲軟部組織の原因によって生じるROM制限"
となっています。
また、関節周囲軟部組織の器質的変化によって生じたROM制限が拘縮といわれています。
2)拘縮の定義
現在の拘縮の定義として、
"皮膚、骨格筋、関節包、靭帯などの関節周囲軟部組織が器質的に変化し、その柔軟性や伸張性が低下した事で生じたROM制限。"
と整理されています。
拘縮の責任病巣
拘縮は、皮膚や骨格筋、関節包、靭帯などの関節周囲軟部組織が関与しており、責任病巣はとても多く介入に困難する事が多いです。
また、関節周囲軟部組織の中でも、
骨格筋と関節包は関節運動の生理的制限としての寄与が高い事があきらかになっており、拘縮の責任病巣の中心となっている可能性が高い。
とされています。
実際に、ラットを使用した動物実験では、
膝関節を屈曲位で不動化すると2週後で拘縮が生じ、
足関節を底屈位で不動化すると4週後で拘縮が生じます。
骨格筋が拘縮の責任病巣の中心である事が明らかになっています。
それ以上の不動期間になると、関節包が拘縮の中心になるとされています。
また、ROM制限の約1割は皮膚の変化に由来する事も明らかになっています。
一方、靭帯に関しては、関節が不動になる事で力学的に脆弱になる事から、拘縮の責任病巣としての関与には否定的である。
と言われています。
拘縮の促進要因
拘縮を引き起こす直接的な原因は「関節の不動」です。
拘縮を促進させる要因として、加齢による生物学的要因に加え、痛みや痙縮などといった事で関節の不動に繋がります。
実際にラットを使用した動物実験において、
ラットの足関節を最大底屈位で不動化する事でヒトの尖足拘縮をシュミレーションした研究結果において1週間で拘縮が発生し、しかも不動期間を延長すると、拘縮も進行する事が明らかになっています。
image:関節可動域制限の発生メカニズムとその治療選択
なぜ、不動期間の延長に伴って拘縮が進行するのでしょうか?
"不動により、骨格筋が短縮し拘縮が進行する。"
と考える人がほとんどだと思います。
しかし、ラットを使用した足関節尖足拘縮モデルのヒラメ筋においては、不動期間の1週時点で、対照群(通常のラット)よりも有意な筋長の短縮を認めたものの、その後の期間は有意な変化は認めなかった。との報告があります。
image:関節可動域制限に対する基礎研究の動向と臨床への応用
つまり、
「不動期間の延長によって生じる骨格筋の短縮は拘縮発生の原因では無い。」
という事が考えられます。
また、骨格筋の伸張性が低下する事が明らかになっており、筋の伸張性が拘縮と関係があると考えられています。
拘縮とコラーゲンの関連
皮膚や骨格筋、関節包などの関節周囲軟部組織において共通してコラーゲンの増生に伴う繊維化の発生が認められており、繊維化の発生により拘縮が生じます。
よって、
関節周囲軟部組織にコラーゲンが増生すると拘縮が生じる。
という事がいえます。
1)皮膚性拘縮とコラーゲンの関連
皮膚組織は、表皮、真皮、皮下組織からなります。
真皮はコラーゲンが非常に蜜なのに対し、皮下組織は脂肪細胞を多く含んでおり、その隙間にコラーゲンが存在します。
image:ヒューマン・アナトミー・アトラス
不動が生じると、皮下組織の脂肪細胞が萎縮・消失し、その隙間を埋めるようにコラーゲンの増生が生じます。
また、不動期間の延長に伴い、コラーゲンの増生は顕著になる傾向にあたります。
よって、不動が起きると皮下組織にコラーゲンが増生し、それに伴い繊維化が発生する事で皮膚性の拘縮が生じるとされています。
2)筋性拘縮とコラーゲンの関連
骨格筋において、最外層の筋上膜やその内部においていくつかの筋繊維を束ね、筋束を形成している筋周膜や筋繊維を直接包む筋内膜といった筋膜にコラーゲンが存在します。
image:TRIGGERPOINTのHPより
不動が起きると、コラーゲンの増生により筋周膜や筋内膜に肥厚が生じる事で骨格筋の繊維化が発生します。
よって、不動が起きるとコラーゲンの増生により筋周膜や筋内膜に肥厚が生じる事で骨格筋の繊維化が発生する事で筋性の拘縮が生じるとされています。
また、不動に伴う骨格筋の繊維化には低酸素状態が原因であると考えられています。
3)関節性拘縮とコラーゲンの関連
関節包は、外層にある繊維膜と内層にある滑膜があります。
その中でも、滑膜には脂肪細胞が存在し、コラーゲンはその隙間に存在します。
不動が起こると、滑膜における脂肪細胞の萎縮・消失が生じ、その隙間を埋めるようにコラーゲンの増性が生じます。
また、動期間の延長に伴い、コラーゲンの増生は顕著になる傾向にあたります。
よって、不動が起きると関節包の滑膜にコラーゲンが増生し、それに伴い繊維化が発生する事で関節性の拘縮が生じるとされています。
拘縮に対してのリハビリテーション
1)筋収縮に対してのリハビリテーション
ROM制限の多くは、関節周囲軟部組織の器質的変化である拘縮に筋収縮(筋緊張や痙縮)が影響しています。
その為に、第一段階では、筋収縮の影響を取り除く必要性があります。
筋収縮に対してのリハビリテーションでは、
"薬物療法(筋弛緩剤やボツリヌス毒素筋注など)や、ストレッチなどの運動療法、ホットパックなどの物理療法が主体"となっています。
詳しくは、こちらの記事を参照下さい。
画像をクッリクする事で閲覧出来ます。
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2)関節周囲軟部組織に対してのリハビリテーション
拘縮に対してはその病巣が関節周囲軟部組織のいずれであってもその病態には筋繊維の発生が関与しており、介入ターゲットとなるのは、コラーゲンという事になります。
先程も述べたように、不動に伴う骨格筋の繊維化には低酸素状態が原因であると考えられています。
よって、低酸素状態を緩和する事によって、筋性拘縮の発生を軽減できる可能性があります。
実際に、低酸素状態を緩和させるアプローチとして、第一に温熱療法によって筋血流の促進が挙げられます。
しかし骨折後など炎症が強い時期では適用する事が難しいです。
また、頻回を筋収縮行う事が出来れば、筋ポンプ作用によって血流を促進する事が可能となります。
そこでも用いるのが、「電気刺激療法」となります。
実際に、伸張性が低下している筋に対して、等尺性単収縮を誘発できるように設定し行っていきます。
また、ストレッチと電気刺激の併用によって、筋性拘縮が改善されたとの報告もあります。
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まとめ
今回、拘縮についてアプローチ法についてまとめました。
拘縮を伴う対象者に対して、なぜ拘縮が生じているのか、原因を分析し介入していく必要性があります。
最後まで読んで頂き有難うございました。
参考文献
ストレッチと電気刺激の併用は不動に発生する関節拘縮の改善を促進させるか?
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