脳卒中の運動麻痺におけるローテーターカフ(回旋筋腱板)のアプローチ
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脳卒中後の対象者で、肩を挙上する際に、肩甲帯が伸展の最終域で固定し、三角筋の中部繊維で腕を振り回しながら挙上する対象者はいませんでしょうか?

更にこの動作を繰り返すと、肩にストレスが生じ疼痛が生じる原因となります。

このような場面がみられる場合、
"ローテーターカフ(回旋筋腱板)に問題がある"
と考えられます。

 

 

ローテーターカフ役割・特徴

 

ローテーターカフは肩甲骨に起始し、上腕骨に停止する筋です。

 

役割として

肩関節の様々な動きを司ったり、

"肩関節の安定性を高める"

というとても大切な役割を担っている筋群です。

 

ローテーターカフの特徴として、

・肩関節の固定を行う。

・肩関節内運動をスムーズに行う。

があります。

肩関節は可動域が広い関節であり、骨性の支持が少なく靭帯や筋などの軟部組織によって安定性を得ています。

 

1)肩関節の固定を行う

 

骨性の安定が無い肩関節は、ローテーターカフによって、関節内圧を向上させ、関節の安定性を得ます。

それによって正常なアアイメントを保ち広範囲の可動域を維持しています。

可動域が大きい分、安定性の少ない構造の肩関節の固定力を補うにはローテーターカフの働きが必要になってきます。

 

例えば、、、

activeで上腕の内旋運動を行う際、大胸筋などのアウターマッスルが収縮すると上腕骨頭が内転方向に引き寄せられ前方に変位しそうになります。

しかし棘下筋や小円筋が伸張されながらも、関節の逸脱を防ぎ逆側へ滑りを発生させる役割があります。

 

つまり、ローテーターカフによる張力は上腕骨を動かすだけで無く、上腕骨頭を関節窩の中心軸に安定させるブレーキの働きがあります。

 

2)関節内運動をスムーズに行う

 

三角筋や大胸筋など関節周囲のアウターマッスルが働くと骨頭は関節窩から逸脱する方向へ動きます。

 

例えば、、、

肩関節外転時、アウターマッスルである三角筋だけが収縮すると、骨頭は上方へ転がり滑り運動が生じ、肩峰に衝突してしまいます。

しかし、棘上筋・棘下筋の働きによって、骨頭が関節窩に抑え込むように圧迫し外転方向に転がりながらも、下方へ滑り運動が生じる為、骨頭が肩峰に衝突する事を防ぐ役割があります。

 

 

 

ローテーターカフを構成する筋

 

ロテーターカフは、4つの筋の総称した呼び名であり、

・棘上筋

・棘下筋

・小円筋

・肩甲下筋

で構成されています。

 

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1)棘上筋

 

♠起始
肩甲骨の棘上窩・棘上筋膜の内面

♣停止
上腕骨大結節の上部・関節包

♥作用
肩関節の外転

♦特徴
肩甲骨の固定性がローテーターカフの中で一番大きい。

肩関節外転0–90°において最も収縮する。
上腕骨頭を関節窩に引き寄せ肩甲上腕関節を安定させる。

 

2)棘下筋

 

♠起始
肩甲骨の棘下窩・棘下筋膜の内面

♣停止
上腕骨大結節の中部・関節包

♥作用
肩関節の外旋・上部:外転・下部:内転

♦特徴
主に肩関節外旋に重要となる。

肩関節外転時における上腕骨頭の下方滑りに作用する。

 

3)小円筋

 

♠起始
肩甲骨後面の外側縁部(上半)

♣停止
上腕骨大結節の下部・関節包

♥作用
肩関節の伸展・内転・外旋

♦特徴
肩関節外転時における上腕骨頭の下方滑りに作用する。

 

4)肩甲下筋

 

♠起始
肩甲骨前面

♣停止
上腕骨小結節・関節包

♥作用
肩関節の内旋

♦特徴
ローテーターカフ唯一の内旋筋

 

 

 

運動麻痺を呈すると

 

運動麻痺によって、ローテーターカフが働かなくなり肩甲骨の固定性が低下(アライメント不良)します。

その状態で、前方にリーチを行う課題を実施すると、肩甲帯が伸展したまま、三角筋の中部繊維を利用して、上腕を振り回すようにリーチしてしまいます。

その結果、このようなリーチを繰り返すと小結節周囲にインピンジメント が生じ、疼痛が誘発されやすくなります。

Day A et alら)の文献によると、肩の運動時に、ローテーターカフが三角筋などのアウターマッスルよりも先行して働く事が示されています。
(参考文献:The stabilizing role of the rotator cuff at the shoulder–responses to external perturbations.

この事から、肩のダイナミックな運動を促通していくには、まずはローテーターカフに対してのアプローチが必要となります。

 

その他にも、実生活の中で麻痺手を使用する為には、外旋の働きも必要となります。

外旋に関与する代表的な筋は、棘下筋といわれています。(Lederman SJ, et al 1987)

棘下筋が機能していないと、上肢は内旋位で挙上する為、前腕は回内位、手関節掌屈位となり、物品のリーチや把持が困難となります。

また、運動麻痺を呈している対象者は、広背筋や大胸筋を過緊張させ代償する為、余計に内旋位を取りやすくなります。

このような状態になると、相反抑制もかかり外旋筋が働きにくくなってきます。

この事から、実生活の中で麻痺手を使用する為には、ローテーターカフ(棘下筋)に対してもアプローチが必要となります。

 

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ローテーターカフへのアプローチ法

 

肩のアライメントが崩れている対象者に対して、前方へのリーチを行う前に、"後方へのリーチから取り入れる"必要があります。

段階付けとして、

①:肩甲帯を下制・肘関節伸展位にて下後方へリーチする。

②:①に前腕回外を加える。

③:②に肩関節の外旋を加える。

④:③の動作で肩関節伸展方向に移動幅を徐々に増やしていく。

注意点として、

①からいきなり③に難易度を上げると、肩の外旋筋群の筋出力が小さい為、体幹の回旋や側屈によって動きを代償してしまいます。

その結果、アプローチしたい箇所に効果的な練習を行えなくなります。

 

また、肩のアライメントが崩れて起きる症状の1つに亜脱臼があります。

この状態で闇雲にリーチ練習等を実施しても、上肢機能が向上させるどころか、肩峰と小結節のインピンジメントを誘発し、疼痛を引き起こす原因となります。

このような症状に対しては"神経筋電気刺激"が効果的とされています。

文献によると、棘上筋と三角筋後部繊維に運動閾値以上の電気刺激を実施すると、亜脱臼が修復されるとの報告があります。
(参考文献:物理療法のグローバルスタンダードの理解と展開

この事から、亜脱臼を認める対象者に対して、神経筋電気刺激によって亜脱臼を補正した状態で、ローテーターカフに対してのアプローチが大事とされています。

 

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まとめ

 

今回、運動麻痺におけるローテーターカフの重要性やアプローチ方法をまとめました。

ローテーターカフは、肩関節の安定性を高める。というとても大切な役割を担っている筋群です。(その中でも安定性に一番関与しているのが棘上筋)

運動麻痺を呈した対象者は、ローテーターカフが働かなくなり肩甲骨の安定性が低下し、アライメント不良となります。

アライメント不良が生じている状態で、無闇にリーチ課題等を実施すると肩に疼痛が生じる可能性があります。

その為、まずはインナーマッスルであるローテーターカフに対してのアプローチが必要となります。

 

 

 

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