
リハビリテーションを行なっている対象者は
「栄養障害やサルコペニア」
を認める事は多いとされています。
若林らが行なった研究1)によると、
施設別に低栄養の高齢者の割合を調査した結果、病院よりもリハ施設の方が低栄養の割合が高かった。
との報告があります。
療法士は、栄養状態を意識して介入していますか?
今回の記事では、
サルコペニアを中心に
「リハビリテーションと栄養の関連性」
についてまとめていきます。
目次
低栄養を認める疾患
リハビリの対象疾患で低栄養を認める事が多いのは、
・脳血管障害
・大腿骨近位部骨折
・廃用症候群
・パーキンソン病
・関節リウマチ
・慢性心不全
・慢性閉塞性肺疾患
・癌 など…
リハ栄養とは

リハ栄養のスクリーニング
リハ栄養のスクリーニングは、
「MANA®️のShort Form」
を用いて評価できます。
(65歳以上の高齢者の栄養スクリーニング)
○MANA®️−SFの評価用紙3)
♥スクリーニング値
・12〜14pt:栄養状態良好
・8〜11pt:低栄養の恐れ
・0〜7pt:低栄養
で判定する。
♣注意点
・MANA®️−SFは、65歳以上に用いられる評価。
・著明な浮腫を認める対象者は、実際の栄養状態よりも高くなる可能性がある。
→この場合は、血清アルブミン値が3.0以下であれば低栄養と判定する。
リハ栄養のアセスメント
MANA®️−SFのスクリーニング値が7点以下、また血清アルブミン値が3.0以下であれば、「低栄養」とみなしリハ栄養のアセスメントを行う必要性があります。
アセスメントのPointとして、
「低栄養、サルコペニア、摂食嚥下障害の有無や原因、現在の栄養状態と予後予測、機能改善を目的としたリハビリが可能かどうか」
を評価していきます。4)
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サルコペニアとは
加齢を伴うサルコペニア
加齢を伴うサルコペニアは、加齢による影響のみで、活動・栄養・疾患の影響は認められません。
加齢を伴うサルコペニアの対策としては、
・レジスタンストレーニング
・蛋白質やアミノ酸の摂取
・禁煙指導
・薬物療法
などが含まれます。
活動に関連したサルコペニア
活動に関連したサルコペニアは、
低活動、廃用症候群、無重力などが原因となります。
活動に関連したサルコペニアの対策としては、
・早期離床
・運動
・容易な安静や絶飲食の防止
などが重要です。
栄養に関連したサルコペニア
栄養に関連したサルコペニアは、
飢餓、エネルギー摂取不足が原因となります。
栄養に関連したサルコペニアの対策として、
適切な栄養管理に基づき栄養管理を行う事が重要
とされています。
☆
飢餓
飢餓では、蛋白質やアミノ酸が不足している為、飢餓の時にレジスタンストレーニングを行なっても、筋の蛋白質をさらに分解させる為、レジスタンストレーニングは禁忌となります。
この場合は、
適切な栄養管理を行えば体重や筋肉量は増加します。
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疾患に関連したサルコペニア
☆
侵襲
侵襲とは、生体の内部環境の恒常性を乱す可能性がある刺激です。
具体的には、手術、外傷、骨折、感染症、熱傷などがあります。
侵襲の目安として、急性の発熱やC反応性蛋白(CRP)の上昇となります。
高度の侵襲では、1日1kgの筋肉量が減少します。レジスタンストレーニングを行なっても、筋の蛋白質は更に分解される為、レジスタンストレーニングは禁忌となります。
☆
悪液質
悪液質の原因疾患には、
感染症(結核、後天性免疫不全症候群など)、癌、関節リウマチ、慢性心不全、慢性腎不全、慢性閉塞性肺疾患、肝不全など
があります。
悪液質の場合、
飢餓とは異なり適切なエネルギー摂取量を投与するだけでは、栄養改善は難しい
とされています。
その為、飢餓と悪液質の鑑別が重要となります。
前悪液質と悪液質の診断基準5)から引用
疾患別のリハ栄養とは
リハビリの対象疾患で低栄養を認める事が多い
代表的疾患として、
・脳血管障害
・大腿骨近位部骨折
・廃用症候群
が挙げられます。
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脳血管障害
脳血管障害の対象者では、8〜49%に何らかの栄養障害を認めている。とされています。
栄養ケアを考慮せず、積極的なリハビリを行う事で、意図せぬ消費エネルギーの更新により、対象者の栄養状態が更に悪化する可能性があります。
また、
BMIが18.5kg/m2以下の低体重の対象者はFIMの改善効果が最も低い
とされています。
BMI(kg/m2):体重kg÷身長m2
BMI:25.0以上→肥満
BMI:18.5〜25.0→普通
BMI:18.5以下→低栄養
脳血管疾患患者におけるリハビリテーション栄養診療ガイドライン6)が推奨しているリハ栄養として、
強化型栄養療法を行う事を推奨しています。
大腿骨近位部骨折
大腿骨近位部骨折は、高齢者の運動器リハを要する疾患で最も頻発するとされています。
また、大腿骨近位部骨折における低栄養やサルコペニアの頻度も高いとされています。
吉村らの7)研究によると、
BMIの評価では13%に低栄養を認め、
MANA®️−SFでは27%、
血中アルブミン値では53%に低栄養を認めています。
血中アルブミン値4.0g/dl以上→正常
血中アルブミン値3.5〜3.9g/dl→低栄養予備軍
血中アルブミン値3.5g/dl未満→低栄養
大腿骨近位部骨折患者におけるリハビリテーション栄養診療ガイドライン8)が推奨しているリハ栄養として、
ADLおよび筋力の改善を目的として、術後早期からリハビリテーションと併用して強化型栄養療法を行う事を推薦しています。
廃用症候群
廃用症候群とは、疾患などの為に活動性や運動量の低下した安静状態が続く事で、全身の臓器に生じる二次的障害の総称です。
原因として、誤嚥性肺炎や人工呼吸管理、集中治療管理を要する多発性外傷や手術後などの高度の侵襲が生じる疾患が多いとされています。
また廃用症候群では、低栄養とサルコペニアの頻度が高いです。
高齢者では、軽度の侵襲や短期間の臥床においても廃用症候群となりやすい為、不要な安静時臥床や絶飲食を避け、早期離床と経口摂取が薦められています。
まとめ
今回、リハビリテーションと栄養の関係性についてまとめました。
高齢者の多くは低栄養であり、リハビリを提供する際は、対象者の栄養状態を把握する必要があります。
ただ単に、筋力や耐久性が低下しているから、レジスタンストレーニングを行う介入は、蛋白質が消費され筋力が余計に減少する危険性があります。
その為、低栄養の原因が何であるかを評価し、原因に沿った介入をする必要があると思います。
また、対象者の栄養状態を常に把握する為にも、栄養士と深く関わる事が大切だと感じます。
本日も最後まで読んで頂き本当に有難うございました。
この情報が今後の一助になって頂ければ幸いです
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引用文献
1)5)リハビリテーションと臨床栄養
4)低栄養とリハビリテーション栄養管理の考え方−特にエネルギー必要量に関して−
6)脳血管疾患患者におけるリハビリテーション栄養診療ガイドライン
8)大腿骨近位部骨折患者におけるリハビリテーション栄養診療ガイドライン