
車椅子を利用する対象者の中で、
「車椅子の調整」
は重要とされています。
車椅子座位において「身体に適しており、安楽なもの」でなければなりません。
車椅子が適していないと、仙骨座りになる事があります。
今回は、仙骨座りに対しての原因と対応についてまとめていきます。
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目次
良好な車椅子の座位姿勢とは
そもそも、良好な座位姿勢とはどの様な事を指すのでしょうか?
車椅子を利用した対象者にとって重要な姿勢は、
「様々な姿勢を取る事が出来る」という事になります。
その他にも、良好な座位姿勢の条件として、
・姿勢そのものが安定している。
・力んでおらず、全身的にリラックスが図れている。
・動きたい時に、本人なりに動ける。
ことが挙げられます。
車椅子を利用する対象者では、運動麻痺などの身体機能の低下により、様々な姿勢を取る事が難しい状態です。
また姿勢が崩れると、仙骨座りになってきます。
仙骨座りの弊害として、褥瘡や腰痛などを引き起こす原因となり、最終的には全身の廃用症候群に陥ります。
その他に仙骨座りによって生じる弊害として、
・全身的に筋緊張の亢進
・呼吸の浅薄化
・嘔吐
・食欲低下
・上肢機能の抑制
・疲労により臥床したがる
仙骨座りの原因と対応
仙骨座りが生じる原因として、
"車椅子が対象者の身体機能や体格に合っていない事"によって生じます。
仙骨座りになっている際に、
以下の7つが原因となっている可能性が考えられます。
原因①車椅子の奥行きが大きい
座面の奥に殿部を引くと、座面の前端がふくらはぎに当たってしまい、それを避ける為に殿部を前方に滑らせてしまいます。
対応として、
サイズの適切な車椅子への変更と、一時的にバックサポートにクッションなどを立て置き、座面の奥行きを縮める事で対応します。
原因②フットサポート高さが不適切
フットサポートが高すぎると、膝が突き上げられ、骨盤〜体幹が後方へ押し倒されて仙骨座りが生じやすくなります。
フットサポートが低すぎると、足をフットサポートに届かせようと殿部を前方へ滑らせてしまいます。
対応として、
フットサポートの調整や、座面クッションの調整を行い対応します。
原因③スリングシートのままで座らせている
スクリーングシートのままでは、体重の分散性が悪く、坐骨結節部に体重が集中し痛みが生じます。
痛みが生じる事により坐骨結節部に体重が集中しない様に前方へ滑って逃げる事によって生じます。
対応として、
スクリングシートに直接座らせない事や、スクリングシートが劣化している場合はクッションの下にタオルを詰め隙間を埋めるなどして解消します。
原因④バックサポートが不適合
身体機能の低下を要する対象者では、骨盤を真っ直ぐ起こして座る事が困難です。
ある程度骨盤を後傾させないと座位姿勢が取れない場合、通常のバックサポート(90°〜100°の角度)では、骨盤の後方に隙間が生じ、仙骨座りが生じやすくなります。
対応として、
バックサポートの背張りを調整します。
image:WAMNET第9回シーティング
ポイントとして、調整する順に
①殿部が収まるスペースを十分にとる。
②骨盤が後傾しない様に締める。
③緩めて胸が張れるスペースを確保する。
④背部のカーブに合わせて軽く締める。
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原因⑤股関節の屈曲制限
股関節を90°に屈曲させて膝関節を伸展させようとすると、ハムストリングスが伸長されます。
歩行不可能な対象者はハムストリングスが短縮している可能性があります。
座面よりも前方に位置しているフットサポートに足を乗せると、膝関節が伸展しハムストリングスにストレスが生じます。
苦痛から逃れる為に殿部を前方に滑らせ、膝関節を屈曲させようとして仙骨座りが生じます。
対応として、
フットサポートの位置が変更出来る車椅子へ変更します。
一般的にキャスター径の小さな車椅子の方が、フットサポートはより後方になっています。
原因⑥股関節の伸展拘縮
股関節が90°まで屈曲しないと、座面上でしっかりと奥まで殿部を引く事が困難です。
殿部を前方に滑らせる事で、股関節を伸展方向へ逃がそうとして仙骨座りが生じます。
対応として、
股関節に合わせてリクライニング車椅子へ変更し、骨盤の後方に隙間が生じない様にします。
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まとめ
車椅子を利用している対象者は、様々な姿勢を取る事が難しい状態であり、車椅子の調整を行わないと仙骨座りが生じる可能性がある。
仙骨座りによる弊害として、活動能力の低下や、腰痛、褥瘡を引き起こし、全身の廃用障害を引き起こす可能性がある。
仙骨座りの原因として、車椅子が対象者の身体機能や体格に合っていない事が挙げられ、車椅子の調整が必要になる。
もっと、車椅子調整への理解を深めたい方はこちらを参照して下さい。