遂行機能障害を理解する。〜症状・評価・エビデンスに基づいた介入〜
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管理人のYudai@yudai6363)です。

 

 

今回は、高次脳機能障害の中でよく生じる障害の一つ

解説をしていきたいと思います。

 

遂行機能とは

 

遂行機能とは、"人が目的活動を営む為に、または日常生活の問題を計画的に解決する為に欠かせない機能"です。

 

 

▶︎遂行機能が成り立つ要素

 

遂行機能は、4つの要素から成り立っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

要素①「目標の設定」
未来に起こる出来事の目標を決める。

 

要素②「行為の計画」
目標を実現する為の計画をたてる。

 

要素③「計画の実行」
目標に向かって実際に行動を開始し継続する。

 

要素④「効果的な行動」
目標に近づく様に実行に対して適正かつ効果的に行動する。

 

これらの要素には、"適切に機能する為に情報の取捨選択に関わる判断力や、目標を想定した柔軟で計画的な思考が要求"されます。

 

 

 

遂行機能障害とは

 

遂行機能障害は、"言語、記憶、失行などの一定の独立性をもった高次脳機能が保たれているのに関わらず、それらの機能を有効的に活用できない統合障害"とされています。

 

 

▶︎症状

 

 遂行機能障害の症状として、

・物事に対しての優先順位がつけられない。

・効率が悪く、いきあたりばったりの行動となってしまう。

・段取りが悪い。

・計画性が無い。

などがあり社会生活に影響が生じます。

 

 

 

▶︎病巣

 

遂行機能障害が生じる病巣として、"前頭葉機能との強い関連性があり、また前頭葉に加えて大脳基底核をはじめとする広汎な神経回路が関与"しています。

 

 

 

前頭葉症状

 

遂行機能に影響を与える前頭葉が損傷された場合に鹿島らは、5つの障害の形式に区別出来るとされています。

 

 

 

▶︎①概念・セット転換の障害

 

前頭葉症状によく診られるものであり、一定の概念や情報、心の構えから他の概念や情報、心の構えに移る事が出来なくなります。

 

主に、発想や視点の転換が困難で、ひとつの考えや視点にこだわり柔軟な思想が出来なくなるといった事が生じます。

 

 

▶︎②ステレオタイプの抑制障害

 

日常的・習慣的な認知傾向を抑制する事が難しくなります。

 


例えば、

・後出しジャンケンで負けられない。

・タクシーが来ると手を上げてしまう。

・バスが来ると乗りたくなる。

といった症状があります。

 

 

▶︎③複数情報の組織化障害

 

認知や記憶における個々の情報の受容・処理・操作などは保たれているが、それらの情報の組織化が必要とされるような場面では問題が生じます。

 


例えば、
数学など一定の明確な条件下で行う課題であれば、かなり複数の課題でも対応出来るが、社会生活など複数の不確定な情報を柔軟に処理する事が出来ない等があります。

 

 

 

▶︎④流暢性の障害

 

思考の柔軟性が低下します。

 

例えば、

言葉が次々と出てこない。

・同じ回答を続けてしまう。

といった症状があります。

 

 

▶︎⑤言語行動の抑制障害

 

こちらの指示の意味は理解しているにも関わらず、反射的な抑制を制御する事が出来なくなります。

 


例えば、
前頭葉損傷者に対して、「動作を真似して下さい。」と指示すると動作は可能ですが、「こちらが手をあげた際に、指を伸ばして下さい。」と指示すると、一度は指を伸ばすが、すぐに手をあげるといった反響動作的な特徴があります。

 

 

 

遂行機能障害の評価

 

総合的行動検査としてBADSが代表的です。

 

また、スクリーニング検査としてFABがあります。

 

その他にも、ウィスコンシンカード分類検査・ハノイの塔・Modified Stroop Testがあります。

 

 

▶︎BADS

 

BADSは1996年に英国のBarbara Wilsonらにより作成された評価です。

 

遂行機能障害により生じる様々な日常生活上の問題解決課題を有機的に組み合わせた、遂行機能に関する実際的かつ包括的な検査です。

 

 

 

▶︎FAB

 

FABはDuboisらにより2000年に発表された評価であり、6つのサブテストを合計して18点満点となっています。

 

カットオフ値は12/11点であり、所要時間は15〜10分で済みます。

 

 

 

 

▶︎ウィスコンシンカード分類検査

 

ウィスコンシンカード分類検査は「概念ないしセット転換の障害」に関する評価で、仮説生成と反応切り替え機能のためにしばしば使用される測定法です。

 

ウィスコンシンカード分類検査は、無償で提供しており、以下のURLから自由にダウンロード出来ます。

 

 

 

▶︎ハノイの塔

 

ハノイの塔は9パターンの問題で構成されたGoelの変法が一般的に評価として使用されています。

 

評価規則を守りながら制限時間内(2分以内)で中央の棒に積み上げていき、効率的・計画的な行動が要求されます。

 

 

 

▶︎Modified Stroop Test

 

Modified Stroop Testは、ステレオタイプの抑制の障害に関する評価です。

 

 

 

 

エビデンスに基づいた介入

 

遂行機能障害に対して介入するにあたり、"まず遂行機能のどこの側面(目標の設定段階・計画段階・実行段階)で障害されているのか"について対象者が明確にする必要性があります。

 

 

▶︎Metecognitive strategy training

 

Metecognitive strategy training(GradeA)とは、自己の能力を自覚した上で動作を選択していく課題を指します。

 

例えば、"日常生活動作の練習中や復職に向けた練習中に、各動作の目的と予想される結果と難しさ、そして自分自身の能力で達成する為には、どの様な動作を選択するべきなのか"といった遂行機能障害を補う手段を身につけ、自己の管理能力を向上させる介入です。

 

また、Metecognitive strategy trainingの介入のひとつとして、Goal Management Trainingがあります。

 

 

 

▶︎Goal Management Training

 

Goal Management Training(以下:GMT)はLevineが提唱した目標設定が出来ない脳損傷者のトレーニングプログラムであり、意図した行動が実現出来る様に「計画、構造化」を目的としたプログラムです。

 

 

GMT5つのStageから構成されています。

 

Stage1.
現状に注意を向け、計画を行い何が目標なのかに目を向ける。


Stage2.
適切な目標を選び設定する。

 

Stage3.
目標を達成する為に、目標を部分的に分け副目標の設定を行う。


Stage4.
目標、副目標を記述し溜める。

 

Stage5.
結果を設定した目標と比較(モニタリング)する。

 


なお、結果が目標にマッチしなければ、Stage事のプロセスを繰り返します。

 

 

その他にも対象者の対処能力を改善させるだけで無く、"機能障害に適合させる様に環境に対しても働きかける事も重要"とされています。

 

 

 

まとめ

 

遂行機能とは、日常生活の問題を計画的に解決する為に欠かせない機能。


障害されると、物事に対しての優先順位がつけられない。段取りや計画性が無い。などの症状があり社会生活に影響が生じる。


 
病巣は、前頭葉機能との強い関連性があり、また大脳基底核をはじめとする広汎な神経回路が関与する。


 
評価では、総合的行動検査として、BADS、スクリーニング検査としてFABがある。その他にも、ウィスコンシンカード分類検査やハノイの塔、Modified Stroop Testがある。


介入として、
遂行機能のどこの側面で障害されているのかについて対象者が明確にする事や、機能障害に適合させる様に環境に対しても働きかける事も重要。

 

 

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参考文献・書籍

・前頭葉機能の検査法
・前頭葉の新しい評価法
・前頭葉症状の診かた
・前頭葉機能障害の認知リハビリテーション
・高次脳機能障害−検査の進め方
・遂行機能障害に対する認知リハビリテーション
・右前頭葉背外側損傷に対する遂行機能リハビリテーション
・高次脳機能障害マエストロシリーズ(3)リハビリテーション評価 
・高次脳機能障害学第2版