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ブログを運営している作業療法士のYudai(@yudai6363)です。
今回は、リハビリテーションを実施する上で、
どの様に目標を設定していくのか?
について解説していきます。
目標設定はリハビリを実施する上で重要です。
なぜ、重要かと言うと、
対象者と医療者が目標を共有・達成する事で、対象者のQOLが向上するからです。
では、早速解説に移ります。
目次
「目的」と「目標」の違い
目標と目的とは、
「目指すもの」
という意味では同じですが、それぞれに違いがあります。
「目的」と「目標」の違いとは、
・目的:
最終的に目指すゴールや達成したい事柄であり目指す到達点。
・目標:
目的を達成するまでに成し遂げる課題や方法、具体的な道筋。
つまり、
目的とは、
目指すべき【的】であり最終地点であり、
目標とは、目的を見失わないように、
目的に辿り着くための【道標】であり通過点
です。
これらをリハビリテーションに置き換えると、
目的は、
・自宅に帰りたい。
・身の回りの事を自分で行いたい。
などの抽象的であるのに対して、
目標は、
・抽象的な部分をより具体的に設定しアプローチする。
といった事です。
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意思決定
目標を設定する上で、対象者の意思決定はとても重要になります。
意思決定には、3つのタイプにわけることが出来ます。
この3つのタイプは、
「基本的に誰が主体となって決めるか」
で分類されます。
また、「対象者の意思決定能力」「目的」によって適切に使い分ける事が大切になります。
・インフォームド・コンセント
・シェアード・ディシジョン・メイキング
パターナリズム
パターナリズムとは、強い立場にある者(医療従事者)が、弱い立場にある者(対象者)の利益の為だとし、対象者の意思を問わずに医療従事者が介入・干渉・支援する事を指します。
パターナリズムを用いて意思決定を行う場面として、
・対象者の生命が関わる様な緊急を要している。
・重度の意識障害があり意思疎通が取れない。
などが挙がります。
インフォームド・コンセント
インフォームド・コンセントとは、対象者自身が主体的に意思決定を行います。対象者と医療従事者が一緒に決めるものでは無く、対象者は医療従事者以外からも積極的に幅広く情報を収集しなければなりません。医療従事者は、対象者に関連する情報を多く提示しますが、意思決定権はありません。
シェアード・ディシジョン・メイキング
シェアード・ディシジョン・メイキングとは、医療従事者は、対象者に関連する情報を多く提示し、十分に理解を促した状況で、医療従事者の意見と対象者の意見を擦り合わせ目標を共有します。
リハビリテーションでの目標設定は、シェアード・ディシジョン・メイキングが理想の意思決定と言われています。
リハビリテーションの目標設定とは
目標設定の定義
リハビリテーションにおける目標設定の定義とは、"対象者と他職種がどのようにリハビリを実行していくのかを議論する過程"とされています。
その他にも、目標設定には、
・対象者が目標を持つものであり、本人が目指す事に意味がある。
・対象者の想いを感じ、現の生活の状態を捉える事が大切である。
という事も、目標設定する上で重要になります。
参考文献:臨床作業療法どう決めていますか?リハビリテーションの目標
目標設定の効果
目標設定理論では、"具体的かつ困難な目標は、対象者のモチベーションやパフォーマンスを高める。"といった事が研究結果から検証されています。
Gauggelらの報告では、脳卒中対象者に対してペグ課題を実施し、
①具体的かつ難易度の高い目標を設定したA群
②「頑張れ」と提示したB群に分けパフォーマンスの効果を検証しました。
結果、①の具体的かつ難易度の高い目標のA群のパフォーマンスが高くなった。との報告があります。
image:
Goal‐Setting as a Motivational Technique for Neurorehabilitation
また、対象者と医療従事者とで入院中の目標を共有し達成された対象者は、
・身体的な健康感が高く、日常活動を支障なく行えると感じて退院した。
・退院後には仕事や家事などの役割に対しても支障を感じなくなる傾向にある。
といった事が述べられています。
引用:リハビリテーション病院における 成人患者とセラピスト間の目標共有に関する研究 ‐その現状分析と方法の有効性‐
目標を立てるツール
目標設定において、様々なプロセスがあり、幾つかの評価ツールの中の一部を紹介します。
・カナダ作業遂行測定(COPM)
・生活行為向上マネジメント(MTDLP)
・作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)
など…
Goal Attainment Scaling;GAS
GASは、身体障害者の目標設定方法として、信頼性、妥当性、感度を有しています。方法として介入後に予測される結果の過程について、対象者と医療従事者が介入前に話し合い目標を設定します。
特徴として、
対象者とともに目標達成ガイドを作成する過程にあり、達成度合いを詳細に段階付ける事により、対象者が将来を見通し、意欲高く自身の問題に臨むことができると推察されています。
image:リハビリテーション病院における 成人患者とセラピスト間の目標共有に関する研究 ‐その現状分析と方法の有効性‐
カナダ作業遂行測定;COPM
COPMは、対象者が重要視する活動を、
・セルフケア
・生産活動
・余暇活動
の3領域に分けて聴取します。聴取から得られた活動の重要度、遂行度、満足度を対象者が10段階で判定します。
特徴として、
作業に焦点を当てた面接方法であり、対象者中心の作業療法を行う事を容易とします。
image:COPMの活用で、当事者主体の作業療法を
生活行為向上マネイジメント;MTDLP
MTDLPは、日本作業療法士協会が提唱しており、対象者のホープを興味・関心チェックリストシート等を用いて聴取し、家事や余暇活動等の項目から対象者が興味の高い活動を選択します。OTは対象者が選択した活動について、遂行が困難な因子をICFの観点から分析し、達成可能な目標を対象者とともに設定します。
特徴として、
・対象者の様々な価値観に応じたホープの聴取が可能。
・OTの臨床思考プロセスを可視化したものであり、OTにとって親和性の高いマネジメント方式です。
image:一般社団法人日本作業療法士協会HP
また、MTDLPを構成するシート類は、一般社団法人日本作業療法士協会のHPから無償で入手可能です。
シート類のダウンロードはこちら↓
作業選択意思決定支援ソフト;ADOC
ADOCは、リハビリテーションの目標設定を協働で行う為のiPadアプリケーションです。
対象者の重要な活動(ICFの活動と参加をベースに選出された)8つのカテゴリー(95項目)から、重要度の高い価値のある活動を選択します。医療従事者も同様に活動を絞り、対象者と医療従事者が選択した活動を照らし合わせながら、介入すべき活動を決定します。
特徴として、
・医療従事者も対象者にとって必要な作業を選択し提案する事により、意思決定の共有を促進出来る。
・失語症などのコミュニケーションが困難な対象者でもある程度の適用が可能。
とされています。
image:ADOC・Paper版
また、ADOCのHPから、体験版「紙面バージョン」が無償でダウンロード出来ます。
ADOC紙面バージョンのダウンロードはこちら↓
ADOCアプリの購入は、iTunesStoreから2500円で購入可能となっています。
目標の立てかた
SMARTを意識する
目標は、一般的にSMARTで作ることが理想的であると言われています。
SMARTは、
George T. Doranが提唱した法則であり、それぞれの頭文字をとっています。
・S:Specific
具体的である。
・M:Measurable
測定可能である。
・A:Attractive
達成可能である。
やりたいことである。
・R:Realistic
現実的である。
対象者に関係がある。
・T:Time-related
目標期限が明確的である。
これらの項目が目標に反映されているか確認していくことで、目標がさらに深まると思います。
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5W1Hを用いる
また、目標設定においては、5W1Hを目標に加えることにより、目標がさらに具体化されます。
「5W1H」とは、
物事を以下の6つの要素に沿って組み立てる思考方法です。
・When:
いつ目標を達成するのか?
時期は?
・Who:
対象者はだれか?
・Why:
何のために行動するのか?
役割は?
・Where:
どこで?
・How:
どのようにするのか?
What:
目的の「何を?」
リハビリテーションにおける例…
という様に「5W1H」を目標に加える事で具体化されます。
特に「Why」(なぜ?)を意識する事で、その先の目的や、対象者の役割を明確にする事が出来ます。
また、
・なぜそのような目標が重要なのか?
・どう支援していけばいいの?
といった事もチーム内で共有しやすくなります。
目標設定を行う際のPoint
Point①
目標を選定する上では、対象者の多様性や個別性を尊重し、対象者と医療従事者が協働的となり目標を選定する。
Point②
意思決定には、
・パターナリズム
・インフォームド・コンセント
・シェアードディシジョンメイキング
の3つにわけることができる。
この3つのタイプは、対象者の意思決定能力や、目的によって適切に使い分けることが大切となる。
Point③
目標設定のプロセスには、様々な評価ツールがあり、対象者によって有効的なツールをもとにして介入を行う。
Point④
目標設定に形式として、「SAMRT」・「5W1H」を目標に加えることでより具体化される。
その中でも「Why:何のために行動するのか? 役割は?」を意識する事で、その先の目的や、対象者が真としている役割が明確化される。
本日も最後まで読んで頂き有難うございました。