
本日もブログを読んで頂き有難うございます。
ブログを運営しているYudai(@yudai6363)です。
今回の記事は、「福島秀晃先生」の文献を参考に
「肩関節周囲筋の筋活動」
について、私見も含めてまとめていきます。
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目次
はじめに
肩関節に対してのリハビリテーションを実施する際に、空間保持を用いて介入する事がよくあると思います。
・アプローチしたい筋(促通や抑制)を捉えて行えているでしょうか?
・適当な関節角度でやっていませんか?
関節角度や運動肢位によって、アプローチしたい筋の筋活動は異なります。
より効果が出る介入する為にも、
「肩関節周囲筋の筋活動を理解する」事はとれも重要です。
肩関節の構造
ざっくりですが、肩関節機能は
・肩甲上腕関節
・肩甲胸郭関節
に分けられています。
肩甲上腕関節:回旋筋腱板
肩甲上腕関節は、回旋腱板や三角筋、大胸筋などのインナーマッスルとアウターマッスルの協調性が重要視されています。
また、肩甲上腕関節機能の重要な役割を担う「回旋筋腱板」は以下4つの筋から構成されています。

役割として、
・上腕骨頭の上方化の抑止。
・前後方向のバランスを保持し、肩関節運動において上腕骨頭を肩甲骨関節窩に引き込む。
などが挙がります。
肩甲胸郭関節:前鋸筋・僧帽筋
肩甲胸郭関節は、僧帽筋、前鋸筋などの筋活動によって肩甲骨と胸郭との連結が重要視されています。
役割として、
・僧帽筋では、屈曲角度に伴いフォースカップルとして働く。(僧帽筋を働かせる為に重要)
・前鋸筋では、屈曲中に肩甲骨を上方回旋させる。
などが挙がります。
肩関節周囲筋の筋活動
回旋筋腱板の筋活動は運動方向や関節角度に応じて変化します。
「運動肢位の変化と肩関節周囲筋の筋活動について」の文献では、
運動方向は、肩関節屈曲、外転。
対象筋は、棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、三角筋前部、中部繊維の筋活動パターンを抽出しています。
肩関節 屈曲運動
○結果
・棘上筋、肩甲下筋の筋活動
▶️主動作筋の三角筋前部繊維よりも先行し、屈曲角度の増加に伴い筋活動は漸減する。
・棘下筋、三角筋の筋活動
▶️屈曲角度の増加に伴い筋活動が漸増する。
と報告されています。
肩関節 外転運動
○結果
・棘上筋の筋活動
▶️主動作筋の三角筋中部繊維よりも先行する。
・棘下筋、肩甲下筋の筋活動
▶️棘上筋の筋活動を追随するように、外転角度の増加に伴い漸増する。
・三角筋の筋活動
▶️屈曲早期から全線維の筋活動が増加し、角度増加に伴い漸増する。
と報告されています。
イラストからも分かる様に屈曲運動では、棘上筋、棘下筋、肩甲下筋は増減の入れ替わりをしており「上腕骨頭の前後のバランスを取っている」事が分かります。
座位での肩関節屈曲・外転の肩甲帯周囲筋の筋活動
「肩甲上腕リズムの臨床応用を考える」の文献では、
肩関節屈曲、外転運動時の僧帽筋上部・中部・下部線維、前鋸筋の筋活動パターンを抽出しています。
○対象筋
・僧帽筋上部、中部、下部線維、前鋸筋
○方法
・両側上肢を下垂させた安静座位から肩関節屈曲と外転を30、60、90、120°までの角角度において測定。
○結果
・僧帽筋上部線維の筋活動
▶️屈曲と外転で有意差を認めない。
・僧帽筋中部線維の筋活動
▶️すべての角度で外転が増加し、60〜120°で屈曲と比較し外転が有意に増加。
・僧帽筋下部線維の筋活動
▶️30°と60°では屈曲が優位に増加。120°では外転が有意に増加。
・前鋸筋の筋活動
▶️すべての角度で屈曲が増加し、30°で外転と比較し屈曲が有意に増加。
この事から
・屈曲初期では、前鋸筋、僧帽筋下部線維が有意に活動する。
・外転初期では、僧帽筋中部線維が有意に活動し、中期においては僧帽筋下部線維が有意に活動する。
・僧帽筋上部線維では、屈曲・外転とも角度の増加に伴い筋活動も漸増する。
という事が分かります。
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運動肢位の変化による肩甲帯周囲筋の筋活動
"肩関節自動屈曲・外転可動域において、座位では低下しているが、背臥位や側臥位では可動域が増大する場面"がよく見られると思います。
運動肢位が変化する事で、肩甲帯周囲の筋活動は変化するのでしょうか?
座位と背臥位の肩甲帯周囲筋活動の比較:屈曲
「肩甲上腕リズムの臨床応用を考える」の文献より、
○対象筋
・僧帽筋上部、下部線維、前鋸筋下部線維、三角筋前部線維
○方法
・肩関節屈曲動作を座位と背臥位の2肢位において肩関節屈曲30、60、90、120、150°をそれぞれ5秒間保持。
○結果
・僧帽筋上部線維の筋活動
▶️全角度において座位の方が有意に高い活動を認める。
・三角筋前部線維の筋活動
▶️屈曲30°では背臥位の方が高い活動を認め、屈曲60〜150°では座位の方が高い活動を認める。
・前鋸筋下部線維の筋活動
▶️屈曲30°では背臥位の方が高い活動を認め、屈曲60〜150°では座位の方が高い活動を認める。
・僧帽筋下部線維の筋活動
▶️屈曲30°では背臥位の方が高い活動を認め、屈曲60〜150°では座位の方が高い活動を認める。
側臥位の肩甲帯周囲の筋活動:屈曲
「拘縮肩へのアプローチに対する理論的背景」の文献より、
○対象筋
・僧帽筋上部線維、棘上筋、棘下筋
○結果
・僧帽筋上部線維の筋活動
▶️低い筋活動を示す。
・棘上筋の筋活動
▶️肩関節屈曲60°より漸減する。
・棘下筋の筋活動
▶️肩関節屈曲60°より漸増する。
座位と側臥位の肩甲帯周囲筋活動の比較:屈曲
「運動肢位の変化と肩関節周囲筋の筋活動について」の文献より、
○対象筋
・棘上筋、棘下筋、三角筋前部、中部、後部線維
○結果
・棘上筋の筋活動
▶️屈曲角度増加に伴い座位・側臥位ともに漸減する。
座位では屈曲120°において屈曲30°、60°よりも有意に減少。
・棘下筋の筋活動
▶️屈曲角度増加に伴い座位・側臥位ともに漸増する。
側臥位では、屈曲120°において屈曲30°よりも有意に増加。
・三角筋前部線維の筋活動
▶️座位において屈曲角度の増加に伴い漸増する。
側臥位では、屈曲角度が増加しても一定の筋活動は維持する。
・三角筋中部線維の筋活動
▶️座位において屈曲角度の増加に伴い漸増する。
側臥位では、座位よりも高い筋活動を認め、屈曲角度が増加しても一定の筋活動が維持する。
・三角筋後部線維の筋活動
▶️座位において屈曲角度の増加に伴い漸増する。
側臥位では、座位よりも高い筋活動を認め、屈曲角度が増加しても一定の筋活動が持続する。
側臥位の肩甲帯周囲筋の活動:外転
「肩甲上腕リズムの臨床応用を考える」の文献より、
○対象筋
・僧帽筋上部、中部、下部線維
○方法
側臥位にて肩関節外転30、60、90、120、150°をそれぞれ5秒間保持。
○結果
・僧帽筋上部線維の筋活動
▶️外転角度の増加に伴い漸減し、30°と比較して120、150°において有意に減少する。
・僧帽筋中部線維の筋活動
▶️外転角度の増加に伴い漸減傾向を認め、30°と比較して120、150°において有意に減少する。
・僧帽筋下部線維の筋活動
▶️外転角度の増加に伴い漸増傾向を認め、30、60、90°と比較して150°において有意に増加する。
この事から運動肢位が変化すると、上腕や前腕の重みや重力によって、肩甲上腕関節の力学的負荷が変化します。
これらの情報を利用し、
運動角度や運動肢位を調整する事で、肩関節周囲筋の筋活動を個別に抑制、促通する事が可能と考えます。
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効果的な促通方法
よく臨床で見られる動作として
・肩挙上時時、インナーマッスルが機能しない。
・肩甲骨が不安定。
といった場面があります。
インナーマッスル対しての促通
運動麻痺があり、肩挙上時にインナーマッスル(特に回旋筋腱板)が機能せず、三角筋前部線維を過剰に働かせ、腕を振り回せて挙上させる場面がよく見られます。
・「三角筋前部線維」を抑制させ、「棘上筋、棘下筋」を促通したい。
その場合は、
①
三角筋前部線維は、屈曲角度の増加に伴い漸増する。
座位と側臥位の比較では、屈曲角度が増加しても一定の筋活動は維持する。
②
棘上筋は、屈曲60°角度増加に伴い漸減する。
③
棘下筋は、屈曲角度増加に伴い漸増する。
屈曲120°において屈曲30°よりも有意に増加する。
この情報から介入として、
・側臥位から屈曲運動を開始する。(三角筋前部線維の抑制)
・棘上筋への促通として30°〜60°での空間保持課題。
・棘下筋への促通として90°〜180°での空間保持課題。
を行うと効果的だと思います。
肩甲胸郭関節機能筋の促通
・肩甲骨が不安定であり、「前鋸筋」「僧帽筋下部」を促通したい。
その場合は、
①
前鋸筋下部線維は、屈曲30°では座位より背臥位の方が高い活動を認る。
②
僧帽筋下部線維は、屈曲30°では座位より背臥位の方が高い活動を認る。
この情報から介入として、
・背臥位にて屈曲30°位での空間保持課題
を行うと効果的だと思います。
本日も最後まで読んで頂き有難うございました。
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