Pusher症候群を理解する。〜症状・メカニズム・評価・介入方法〜
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ブログを運営しています、Yudai@yudai6363です。

今回は、「Pusher症候群」について解説していきます。

 

この記事を読む事により、
・Pusher症候群の症状、メカニズム、評価、介入といった一連の知識を得られます。

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Pusher症候群の概要

Pusher症候群とは、「あらゆる姿勢で麻痺側へ傾斜し、自ら非麻痺側上下肢を使用して床や座面を押し、他動的に姿勢を正中にしようとする他者の介助に抵抗する1)この現象を初めて報告したDaviesが述べています。

 

Pusher症候群は多くの場合、時間経過に伴い消失していくことが報告されている2)が、長期に生じるPushing症候群は、ADLを著しく低下させ、入院期間が優位に延長する事や、在宅復帰率が著しく低下する3)、といった報告があり予後が不良とされています。

 

 

 

症状

Pusher症候群でよく見られる症状は、「背臥位から短座位に移行させた時などの姿勢変換時」によく観察されます。

実際Pusher症候群は短座位において、体幹が麻痺側に傾斜している際に下腿は正中位を取り、体幹が正中位になった際は非麻痺側の下腿が外旋する、といった現象が生じます。

通常、非麻痺側の下腿が外旋する様になるのは非麻痺側へ傾斜した際に生じる反応です。

 

ここで注意する点として、

身体が麻痺側へ傾斜している=Pusher症候群では無いという事です。

 

「Pusher症候群は体幹が麻痺側へ倒れ且つ、他動的に姿勢を正中にしようとすると抵抗する」事であり、「体幹が麻痺側へ倒れ多動的に姿勢を正中にした際に抵抗なく保持出来る」のがLateropulsionです。

 

Lateropulsionについては、こちらの記事を参照。

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メカニズム

右半球損傷例の出現数は、左半球損傷例より多く、右半球例と左半球例には回復過程に差異があり左半球損傷例では早期に回復する4)事が報告されています。

 

本来、人間が姿勢保持に関与する重要な入力系は、「視覚、前庭核、体性感覚」となっています。

 

KarnathらのPusherのメカニズムについての研究結果によると、Pusherを呈する症例は、視覚的な垂直判断(SVV)は正常であり、自己身体軸の垂直判断(SPV)にのみ特異的な偏奇が生じる5)とされています。

 

Karnathらは、Pusherの無い重度USNを伴う右半球損傷例と感覚脱失を伴う右半球損傷例をコントロール群にし、Pusher群と自覚的身体軸垂直判断能を比較しました。

 

全額面上で回転するよう操作できる座位保持装置を用い、視覚的に外部環境の情報を取り入れ垂直判断を行う事のできる開眼時身体的垂直判断と、視覚的情報を遮断した閉眼時身体的垂直判断の差異を調査しました。

 

その結果は、Pusherの無い重度USNと感覚脱失を伴う右半球損傷例では、開眼時、閉眼時ともにほぼ正常であったのに対して、Pusher群では開眼時は、ほぼ正常であったが、閉眼時の身体軸垂直判断は約18°非麻痺側へ傾斜していた5)事が分かりました。

Image:5)より引用および一部改正

 

これらの報告から、視覚、前庭核、体性感覚の各々の障害によってPusher症候群が出現する訳ではなく、別のメカニズム「second graviceptive system」の存在が視察される5)としています。

 

 

責任病巣

second graviceptive systemの障害の責任病巣として、中心後回、島後部、視床外側部において多くPushers出現し、内包や放線冠など限局した箇所にもPushersが生じる6)との報告があります。

 

また半球間による出現率として、急性期では出現率に半球間での差は無いとされており、急性期以降では、右半球損傷例の報告が多いのが現状です。

この事から、右半球損傷例は回復が遅延する事が示唆されています。

 

 

Pusher症候群のメカニズムと責任病巣をまとめると、「SPVである身体的垂直軸は両側で支配されているが、右半球における役割が多い」と考えられます。

 

 

 

評価

Pusher症候群の評価として、

・SCP(Clinical assessment Scale for Contraversive Pushing)

・Pusher重症度分類

・BLS(Burke Lateropulsion Scale)

が代表的な評価です。

 

 

SCP

Clinical assessment Scale for Contraversive Pushing通常SCP。

SCPは、Pusherの3つの特徴である、①自然な姿勢での傾斜、②非麻痺側上下肢の外転や伸展(押す現象)の出現、③修正への抵抗、の3つを下位項目に設定しています。

これらの3つの項目を座位、立位で評価し、各下位項目が重症度である場合に2点となり、Pusherが無い場合には0点となります。

合計すると最重症の場合には6点Pusherが無い場合には0点となります。

Image:7)から引用

 

 

Pusher重症度分類

Pusher重症度分類は、SCP同様に3つの下位項目から構成しています。

押す現象が無い場合には0点、最重症が6点と設定されており、座位保持、起立保持、歩行時に観察します。

この重症分類は、1点でも該当すればPusher有りと判定します。

Image:7)から引用

 

 

BLS

Burke Lateropulsion Scale通称BLS。

BLSは、背臥位、移乗、歩行、座位、立位の5項目から構成しています。

抵抗が無い場合には0点最重症が3〜4点に設定され0〜17点の範囲でPusherの重症度を評価します。

Point!

SCPは世界でよく使用される評価。

Pusher重症度分類は日本でよく使われる評価。

BLSは、SCPやPusher重症度分類と比較して下位項目が多く経過を追いやすい。

 

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介入

これらのメカニズムを介入に当てはめると、

Pusherは、SPVが障害されSVVが正常である」という利点を利用します。

その為、他動的にリハビリをするのでは無く、対象者が能動的に行う事が大切です。

 

環境手段を用いる

対象者自身が直立である事を認識する様に環境を整える事がポイントです。

例えば、鏡を使用し対象者自身が自分の姿勢を確認したり、写真や動画などを撮り傾斜している事を認識させる事が重要です。

 

また、SVVが正常という利点を活かして、垂直な構造物と対象者の身体軸の乖離を認識させる事も大切です。

例えば、病棟の自室に点滴棒など垂直になる様な物品を設置し、その垂直位に対象者自身の身体軸を合わせる介入を行います。

 

 

身体軸が自発的に正中位を越える課題を提供する

麻痺側へ傾斜している姿勢に対して、非麻痺側へ自発的に修正する課題を提供します。

この課題は、対象者がより能動的に行う事が可能でありスムーズに非麻痺側へ傾斜出来る事が特徴です。

例えば、輪を使用して、非麻痺側方向へリーチする課題や、起き上がりの逆パターンを利用し、on elbowの状態で保持する課題を実施します。

加えて、鏡などの環境手段を用いれば更に有効的だと感じます。

 

 

 

参考文献

1)Davies PM : Steps to follow. Springer-Verlag.1985ステップス・トゥ・フォロー.冨田昌夫(訳).pp.285-304,シュプリンガー・フェアラーク東京 1987.

2)Pedersen PM, Wendell A, et al.: Ipsilateral pushing in stroke: incidence, relation to neuropsychological symptoms, and impact on rehabilitation. The Copenhagen Stroke Study. Arch Phys Med Rehabil. 1996; 77: 25‒28.

3)Babyar SR, White H, et al.: Outcomes with stroke and lateropulsion: a case-matched controlled study. Neurorehabil Neural Repair. 2008; 22: 415-423.

4)Danells CJ, Black SE, et al.: Poststroke “pushing”: natural history and relationship to motor and functional recovery. Stroke. 2004; 35: 2873‒2878.

5)Karnath HO, Ferber S, et al.: The origin of contraversive pushing: evidence for a second graviceptive system in humans. Neurology. 2000; 55: 1298‒1304.

6)Karnath HO, Johannsen L, et al.: Posterior thalamic hemorrhage induces “pusher syndrome”. Neurology. 2005; 64: 1014‒1019.

7)阿部浩明:《特別寄稿》Contraversive pushingの評価と背景因子を踏まえた介入 .理学療法研究第28号:10−20.2011

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