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ブログを運営している作業療法士のYudai(@yudai6363)です。
今回の記事では、
「運動麻痺回復ステージ理論」
について述べていきます。
脳血管障害後の機能回復メカニズムを説明する為に、運動麻痺回復ステージ理論があります。
このステージ理論の回復には3つの段階から分けられており、その回復時期によってリハビリテーションの介入が変わってきます。
引用:原 寛美:脳卒中運動麻痺回復可塑性理論とステージ理論に依拠したリハビリテーション.
目次
1st stage recover
概要
引用:原 寛美:脳卒中運動麻痺回復可塑性理論とステージ理論に依拠したリハビリテーション.
急性期(発症〜3ヶ月)の回復メカニズムは、残存している皮質脊髄路に依存しており、「存在している皮質脊髄路を刺激し、興奮性を高めていく事で運動麻痺の回復を促す」とされている時期です。
そして、その興奮性は急性期から急速に減退し3ヶ月までには消失します。
これはワーラー変性の急性期からの出現が関与しています。
リハビリテーション
急性期において運動麻痺の回復を促進するリハビリテーションとは、「発症後の早い時期から残存している皮質脊髄路を刺激し興奮性を高める事が出来るか」が重要です。
またこの時期で配慮する点として、学習性不使用を予防する事です。
その為この時期では、随意性を引き出すアプローチを行っていきます。
随意性を引き出すアプローチとして、TMS、ミラーセラピー 、電気療法などを行います。
そして、随意性が出現したら、促通運動を取り入れた自動介助運動から自動運動へと移行し、課題指向型アプローチに繋げていきます。
その他にも、早期からの歩行練習も重要であり、十分に下肢の支持性が得られない場合はKAFOを用いて立位・歩行練習を実施します。
KAFOを使用し、荷重をかける事で非損傷半球の過度な使用を防ぎ、左右の大脳の半球抑制のアンバランスを修正していきます。
2nd stage recover
概要
引用:原 寛美:脳卒中運動麻痺回復可塑性理論とステージ理論に依拠したリハビリテーション.
発症3ヶ月から6ヶ月の回復メカニズムでは、皮質間の新しいネットワークの興奮性に依存する時期であり、3ヶ月をピークにこのメカニズムが再構築されます。
この時期では、皮質間の抑制も解除される事により、代替出力としての皮質ネットワークの再組織化が構築され、更に残存している皮質脊髄路の機能効率を最大限に引き出す中枢指令として機能します。
また、このメカニズムは6ヶ月で消失する為、再組織化を促すリハビリテーションプログラムの成果はこの時期までに引き出す事が求められます。
リハビリテーション
2nd stageのこの時期では、「新しい運動パターンを学習し獲得する事が重要」となります。
またこの時期は、皮質間の抑制が解除される事で、不適切な可塑性と言われる好ましくない可塑性が形成される時期でもあり、これを「痙縮」といいます。
この事から2nd stageでは、機能回復にも痙縮の増強にも繋がる為、リハビリテーションではより精巧なプログラムの立案を行う必要があります。
痙縮は、「速度依存性の伸張反射の亢進」であり、深部腱反射の亢進は痙縮を表すサインであり、注意深く評価する必要があります。
MAS2以上を認める場合には、リハビリテーションの阻害となる為「ボツリヌス治療」を行う事を勧めます。
動作練習に対しては、上肢の屈曲運動パターン、連合反応、足関節内反尖足などを観察し、これらを助長しない課題設定の中で反復した練習を行っていきます。
その際の課題の難易度として、運動学習理論に基づいて6割程度の難易度設定で行っていく必要があります。
下肢に対しては、歩行を改善する事がこのStageで求められ、適切な歩行を行う事が出来るように装具の使用をする事が望められます。
1st stageから行っている介助下での歩行から、正常に近い歩行パターンを学習していく為に、AFOやGSDなどを使用し、ロッカーファンクション、倒立振子モデルなどを考慮した歩行練習を行う事も重要です。
3rd stage recover
概要
引用:原 寛美:脳卒中運動麻痺回復可塑性理論とステージ理論に依拠したリハビリテーション.
発症から6ヶ月以降の回復メカニズムでは、リハビリテーションにより惹起されるシナプス伝達の効率化が図れる時期です。
つまり、2nd stageにより再構築された新しい代替ネットワークが、3rd stageでシナプス伝達が効率化される事によって出力のネットワークがより一層強化され、確立される時期です。
リハビリテーション
3rd stageで重要になってくるのが、「生活期における機能回復を改善させる事」です。
上肢に対しては、低頻度TMSやCI療法を実施していきます。
下肢に対しては、高頻度TMSなどを行っていきます。
またこの時期でも、痙縮の再燃を引き起こす時期となる為、生活のどの様な場面で痙縮を引き起こすのかを明確にして対象者と共有する事が重要となってきます。
運動麻痺回復に阻害する因子
急性期からの運動麻痺回復のリハビリテーションを実施する中で、阻害される主な因子として「ワーラー変性」と「痙縮」があります。
ワーラー変性
ワーラー変性とは、病変部位から下降する皮質脊髄路に生じるものであり、脳卒中発症の第7病日には既にMRI拡散強調画像にて病変側大脳脚において高intensity初見として描出される事が明らかとなっています。
この事から、ワーラー変性は急性期から生じて進行している事を意識して介入する事が重要となってきます。
痙縮
痙縮は脳血管障害の全体の約40%に出現する症状であり、皮質間における抑制の解除された2nd stageに誤った可塑性として出現します。
痙縮の詳細なメカニズムはこちらを参照。
痙縮に対しては、運動麻痺における深部腱反射亢進を初期の痙縮を表すサインと捉え、急性期の不動化の時期から積極的に介入する事で痙縮を予防する事が重要となってきます。
参考文献
・原 寛美:特集、機能回復理論と治療選択. 理学療法ジャーナル 49巻9号 (2015年9月)
・原 寛美:脳卒中運動麻痺回復可塑性理論とステージ理論に依拠したリハビリテーション.脳神経外科ジャーナル. 2012年21巻7号
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