脳卒中による肩関節亜脱臼を理解する。
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ブログを運営している作業療法士のYudai@yudai6363)です。

 

今回の記事では、

「脳卒中による肩関節亜脱臼」

を中心にまとめていきます。

 

この記事を読む事により、
肩関節亜脱臼の原因や評価、介入方法などが理解出来ます。

肩関節亜脱臼が生じる原因

脳卒中片麻痺対象者に生じる肩関節亜脱臼は、上腕骨頭を関節窩に押し付けて固定している筋群、主に棘上筋と三角筋の著しい麻痺によって引き起こされます。

 

棘上筋の働きは、外転作用と安定化作用であり、"関節窩に対して上腕骨頭を引き付ける事″を担っています。

 

三角筋の働きも棘上筋同様に、"外転作用と上腕骨頭を上方へ押し上げる事″を担っています。

 

つまり、棘上筋と三角筋が共同して働く事により、肩甲上腕関節の安定性と運動性を獲得しています。 

 

この事を「フォースカップス作用」といいます。

 

image:林典雄.肩関節拘縮の機能解剖学的特性.理学療法21.357-364.2004

 

 

三角筋のみの作用

三角筋のみの作用では、上腕骨頭の安定性が乏しく、上肢の重量の為に棘上筋や靭帯が伸長され肩関節亜脱臼が生じます。

 

棘上筋のみの作用

棘上筋のみの作用では、外転運動の出力が弱い為、外転運動を効率的に行う事が困難となります。

 

 

 

  

診断方法

肩関節亜脱臼を評価する方法の一部として「触診」を用いります。

 

触診方法として、

対象者の肩峰下端と上腕骨頭の間を軽く押さえ、反対の手で対象者の前腕を支えます。

 

この肢位で下方への軽い伸長と、上腕骨頭を上方へ押し上げる動作を数回繰り返します。

 

その際に、肩峰下端に1押指以上の開きがあると肩関節亜脱臼と診断します。

 

image: 中山恭秀他.脳卒中片麻痺患者の肩関節亜脱臼への対応.MB Med Reha No.49:1-6,2005

 

 

 

予後予測

猪飼らの研究報告によると、発症から6ヶ月以内で肩関節亜脱臼を伴う対象者の時系列変化を調査しています。

 

初回評価で上肢のBRSがⅢ以上、又は麻痺の改善によりBRSが向上する症例は肩関節亜脱臼が改善する傾向を認めています。

 

逆に肩関節亜脱臼が永続的に残る、悪化する因子として、麻痺のStageがⅠ〜Ⅱの場合となっています。

 

image:猪飼哲夫他. 脳卒中片麻痺患者の肩関節亜脱臼の検討-経時的変化について-.リハ医学29:569〜575 1992

 

 

 

 

 

ポジショニング

安静臥床期

発症直後は、安静度の優先が高い為、ベッド臥床している時間が多いとされます。

 

この時期では、肩関節周囲筋の筋緊張が低下する為、基本肢位での臥床において重力により上腕骨頭が外側へ牽引され、肩関節亜脱臼に影響すると考えられます。

 

その為、臥床している際のポジショニングが重要となります。

 

 

背臥位

背臥位では、麻痺側上肢を枕の上に置きます。

 

注意点として、前腕部のみに枕を設置すると、上腕骨頭の落ち込みが予想される為、可能な限り肩甲骨周囲に枕を設置します。

 

image:POSITIONING FOR LEFT HEMIPLEGIA

 

 

側臥位

 側臥位では、麻痺側上肢を上にして過度な肩関節水平内転が生じないように枕を設置します。

 

注意点として、背部にクッションやロールタオルを設置する事で側臥位が崩れないようにします。

中途半端に側臥位を取ると、背部に過緊張が生じ肩関節痛を引き起こす原因となります。

 

image:POSITIONING FOR LEFT HEMIPLEGIA

 

 

 

座位期

血圧などバイタルが安定してきたら、臥床中心の生活から座位中心の生活に移行していきます。

 

この時期の肩関節亜脱臼の対策として、前腕をテーブルに乗せる事が重要となります。

 

前腕支持が継続的に保つ事で、肩関節亜脱臼の増悪を予防する事が出来ます。

 

座位でのポジショニングとして、拘縮などを避ける意味で肩関節内外旋中間位を取る事が勧められています。

 

注意点として、膝の上にクッションや枕のみで対応すると、上肢を支持出来ない場合がある為、十分に評価する必要性があります。

 

image:POSITIONING FOR LEFT HEMIPLEGIA 

 

 

歩行期

 積極的な歩行練習やADL練習を行う時期において、弛緩性麻痺を呈した場合は、肩関節亜脱臼の増悪に留意する必要があります。

 

この時期に用いられる対応方法として、アームスリングが挙げられます。

 

よく臨床で使用するアームスリングに「三角巾」があります。

 

三角巾を使用する場合には、亜脱臼を確認した後に、関節唇に上腕骨頭の距離が短くなるように押し上げ、持ち上げた状態で背部にて縛ります。

 

また肘関節を対象者の腹部の前で水平になる様に吊り下げる事がポイントとなります。

 

注意点として、むやみにアームスリングを乱用せず、アームスリングを使う目的や時間、拘縮への理解をした上で使用する事を勧めます。

 

image: 中山恭秀他.脳卒中片麻痺患者の肩関節亜脱臼への対応.MB Med Reha No.49:1-6,2005

 

 

 

 

リハビリテーション

臨床場面において用いられる介入として電気刺激療法があります。

 

電気刺激療法を実施する事で、抹消からの固定感覚の入力の増加に伴い神経原生の筋力増強を引き起こし肩関節亜脱臼の改善に繋がるとされています。

 

一般的に肩関節亜脱臼を引き起こす筋である、棘上筋と三角筋後部線維をターゲットとします。

 

棘上筋と三角筋後部線維に電極を貼る事で、その間に位置する棘下筋と小円筋にも筋収縮が生じます。

 

結果的に回旋筋腱板とフォースカップル作用に関与する筋に介入する事ができ、肩関節亜脱臼が改善されると考えられます。

 

 image:オージー技研株式会社

 

 

まとめ

・脳卒中片麻痺対象者に生じる肩関節亜脱臼は、上腕骨頭を関節窩に押し付けて固定している棘上筋と三角筋の著しい麻痺によって引き起こされる。

 

・評価では、肩峰下端に1押指以上の開きがあると肩関節亜脱臼と診断される。

 

・予後予測として、発症6ヶ月以内で上肢BRSがⅢ以上、又は麻痺の改善によりBRSが向上すると肩関節亜脱臼が改善する傾向を認める。

 

・ポジショニングとして、対象者の生活に合わせながら適宜対応する事が重要となる。

 

・リハビリテーションとして、電気刺激療法を用いる事で肩関節亜脱臼の改善を図る事が可能となるケースがある。

 

 

 

 

 

参考文献

・中山恭秀他.脳卒中片麻痺患者の肩関節亜脱臼への対応.MB Med Reha No.49:1-6,2005

 ・猪飼哲夫他. 脳卒中片麻痺患者の肩関節亜脱臼の検討-経時的変化について-.リハ医学29:569〜575 1992

・林典雄.肩関節拘縮の機能解剖学的特性.理学療法21.357-364.2004

・濱田一世他.脳卒中患者の肩関節亜脱臼に対してIVESを使用した治療効果の検証.日本慢性期医療学会.600.2019