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管理人のYudai(@yudai6363)です。
今回の記事は、「肩甲上腕関節への介入方法」を中心にまとめていきます。
ちなみに、前回の記事をまだ読んでいない方は、下記のウェブページを参照する事をお勧めします。
肩甲上腕関節の構造
前回の復習になりますが、肩甲上腕関節は、肩甲骨の臼蓋と上腕骨頭により構成される関節です。
上腕骨頭の面責に比べ臼蓋の面責は非常に小さい構造となっており、他の関節に比べ不安定な関節となっています。
不安定な関節な為、筋や関節包・靭帯などの軟部組織は、他の関節に比べ発達しています。
筋では、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4つの筋が存在しており、肩甲骨側から骨頭に向かい四方より鷲掴みする形で骨頭を安定させています。
また関節包・靭帯は、肩甲上腕関節の全体を包んでおり、各運動肢位によって伸長される部位は異なります。
疼痛と筋攣縮
疼痛には、筋攣縮(スパズム)が関与しています。
例えば、棘上筋が何らかの影響で損傷したとします。
棘上筋の神経支配は肩甲上神経であり、肩甲上神経の感覚繊維を経由して脊髄へ。
その後、脊髄後角から脊髄視床路へ経由し大脳皮質へと情報を伝達し「痛い」と認識されます。
その際に、棘上筋だけでは無く同神経支配である棘下筋にもスパズムが生じます。
また肩関節包の上方から前方部には、肩甲上神経が支配しており棘上筋・棘下筋が関与しています。
前方から下方部には、肩甲下神経が支配しており肩甲下筋・大円筋が関与しています。
後方部には、腋窩神経が支配しており小円筋が関与しています。
その為、筋や関節包に損傷などあった際に疼痛が生じ、神経支配である筋にスパズムが生じます。
上腕骨頭の前方偏位
上腕骨頭が前方に偏位する場面をよく臨床で観察されます。
前方偏位の一要因として、後方関節包の短縮が挙がります。(その他にも、様々な要因がある。)
後方関節包は、硬度が高く疼痛を感じにくい、逆に前方関節包は、硬度が低く疼痛を感じやすい傾向にあります。
つまり、後方関節包が短縮すると、前方へ偏位し尚且つ、前方関節包は硬度が低い事から骨頭が前方に押される事でストレスが発生し疼痛が生じる流れになります。
すると前方関節包を支配する肩甲上神経や肩甲下神経が疼痛を感知し、結果的に棘上筋や肩甲下筋などにスパズムが生じます。
各肢位による評価
肩関節可動域制限を呈する要因は、単一では無く様々な要因が関与しています。
例えば、
・筋の短縮やスパズム性の過緊張
・肩関節包や靭帯の短縮
など様々な要因が重なり、結果的に可動域制限が生じます。
肩関節可動域制限への介入を行うなには、どの肢位で何が原因で可動域制限が生じているのか?を的確に評価を行う必要があります。
前上方関節包・上関節上腕靭帯の評価
開始肢位:肩関節1st肢位、前腕中間位。
評価方法:中間位から外旋方向へ。
注意点:肩甲骨を固定する。
制限因子:棘上筋・肩甲下筋・前上方関節包・上関節上腕靭帯・鳥口上腕靭帯。
前方関節包・中関節上腕靭帯の評価
開始肢位:肩関節45°外転位、前腕中間位。
評価方法:中間位から外旋方向へ。
注意点:肩甲骨を固定する。
制限因子:肩甲下筋・大胸筋・前方関節包・上関節上腕靭帯。
前下方関節包・前下関節上腕靭帯の評価
開始肢位:肩関節2nd肢位、前腕中間位。
評価方法:中間位から外旋方向へ。
注意点:肩甲骨を固定する。
制限因子:肩甲下筋・前下方関節包・前下関節上腕靭帯。
後上方関節包の評価
開始肢位:肩関節1st肢位、前腕中間位。
評価方法:中間位から内旋方向へ。
注意点:肩甲骨を固定する。
制限因子:棘上筋・棘下筋・後上方関節包。
後方関節包の評価
開始肢位:肩関節45°外転位、前腕中間位。
評価方法:中間位から内旋方向へ。
注意点:肩甲骨を固定する。
制限因子:棘上筋・棘下筋・後方関節包。
後下方関節包・後下関節上腕靭帯の評価
開始肢位:肩関節3rd肢位、前腕中間位。
評価方法:中間位から内旋方向へ。
注意点:肩甲骨を固定する。
制限因子:棘下筋・小円筋・後下方関節包・後下関節上腕靭帯。
肩関節可動域の制限因子が「筋」か「関節包(靭帯を含む)」かを見分ける方法として、
まずは、可動域制限が生じた際にまずは「筋」を触診します。
その際、筋が張っていたら、「筋が原因」で関節可動域に制限を要している事になります。
一方、筋が張っていない状態で、関節可動域に制限が生じていた場合は、「関節包」が原因となります。
この見分け方によって、何が原因で関節可動域に制限が生じているのかを追求し介入を行っていきます。
肩甲骨周囲筋への介入
スパズム性の過緊張が生じている場合、圧痛所見や筋硬結を生じる事があります。
介入する前に、どの肢位で疼痛や筋硬結が生じるのかを確認します。
確認後、目的となる筋に対して反復収縮を伴ったストレッチ刺激によるリラクセーションを行なっていきます。
1)棘上筋へのリラクセーション
肩甲骨面上での肩関節外内転運動を行いながら棘上筋を触診し、収縮と伸長をする様に誘導します。
2)棘下筋へのリラクセーション
肩関節下垂位〜軽度外転にて外内旋運動を行いながら棘下筋を触診し、収縮と伸長をする様に誘導します。
3)肩甲下筋へのリラクセーション
肩関節軽度外転にて外内旋運動を行いながら腋窩より肩甲下筋を触診し、収縮と伸長をする様に誘導します。
4)小円筋へのリラクセーション
肩関節挙上位にて、外内旋運動を行いながら肩甲骨外側縁で小円を触診し、収縮と伸長をする様に誘導します。
関節包への介入
関節包へ介入する際は、筋にスパズムが生じていないかを確認する必要があります。
また関節包へ介入している際に、スパズムが生じたら再度、筋に対してのリラクセーションを実施し筋スパズムが軽減したら関節包へ介入する、といった一連の動作を繰り返し介入していきます。
1)前上方関節包・上関節上腕靭帯への介入
骨頭を前上方に押しながら、内外旋を加えます。
2)前方関節包・中関節上腕靭帯への介入
肩関節軽度外転位にて骨頭を前方に押しながら、内外旋を加えます。
3)前下方関節包・前下関節上腕靭帯への介入
肩関節の外転角度を増やし骨頭を前下方に押しながら、内外旋を加えます。
4)後上方関節包への介入
骨頭を後上方に押し込みながら、内外旋を加えます。
5)後方関節包への介入
肩関節軽度外転位にて骨頭を後方に押し込みながら、内外旋を加えます。
6)後下方関節包・後下関節上腕靭帯への介入
肩関節屈曲位にて、頭を後下方に押し込みながら、内外旋を加えます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
関節可動域制限を呈する要因は、単一では無く様々な要因が関与しています。
その為、何が要因なのかを的確に評価する事が重要となってきます。
そのうえで、要因に対して介入すれば介入効果が得られると感じます。
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参考文献
・工藤慎太郎:運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略.医学書院
・村木孝行:肩関節痛・頸部痛のリハビリテーション.羊土社
・林典雄:改訂第2版関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション上肢・体幹.メジカルビュー社
・林典雄:機能解剖学より捉えた関節拘縮の考え方.
・酒井吉仁:関節可動域制限に対するモビライゼーションのエビデンス.2003