ADL場面から高次脳機能障害を理解する。〜行動場面からの評価をする〜
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管理人のYudai@yudai6363です。

 

 

今回の記事では、

「ADL場面から高次脳機能障害を理解する。〜行動場面から評価編〜」

について解説していきます。

 

高次脳機能障害とADLの関連

まずは日本脳卒中ガイドライン2015より、

 

●認知障害に対するリハビリテーションには、損なわれた機能そのものの回復訓練と代償訓練がある。いずれもADLの改善を目的とすることが勧められている。(Grade B)

 

●要素的訓練(失われた認知機能そのものに対する回復訓練)の効果が実生活の他の動作に般化するのかに関し質の高い研究はない。(レベル1)

 

●注意障害に対する認知リハビリテーションは特定の注意を改善させるかもしれないが、効果の持続やADLの般化に対してはまだ十分な根拠がない。(レベル1)

 

●半側空間無視に対する認知リハビリテーションは、機能の改善をもたらすが、その長期効果やADLへの般化は十分な根拠がない。(レベル1)

 

●無視そのものの改善を図る訓練で日常機能の改善を目指すよりもADL訓練そのものの方が効果的である。(レベル2)

 

●遂行機能障害に対する認知リハビリテーションの効果について質の高いエビデンスが十分でない。(レベル1)

 

●記憶障害や失行に関しても高いエビデンスの報告はないが、一定の効果のある報告はある。(レベル2)

 

とされています。

 

 

つまり、特定の認知機能訓練(例:かな拾いや線分抹消課題などの机上課題)を実施してもADLに般化するかは不明確となっています。

 

このことから、実際にADLの観察場面からどの様な高次脳機能所見が自立度を妨げているかを評価し、作業療法で特化して行うADLの直接介入が求められます。

 

 

 

観察場面から診る高次脳機能評価

ADL観察からの高次脳機能障害評価として、以下の評価があります。

 

 

・認知関連行動アセスメント(CBA)

◆観察場面:
・生活場面全般

 

◆領域:
・意識・感情・注意・記憶・判断・病識

 

◯参考文献:
・菱川法和:回復期脳卒中患者に対する認知関連行動アセスメントの評価者間信頼性の検討. 愛知県理学療法学会誌.第29巻第2号.2017年

 

 

・Catherine Bergego Scale(CBS)

◆観察場面:
・食事・整容・更衣・移動・所有物の発見

 

◆領域:
・半側空間無視

 

◯参考文献:
・長山洋史:日常生活上での半側無視評価法Catherine Bergego Scaleの信頼性,妥当性の検討. 総合リハビリテーション 39巻4号.2011年

 

 

・The Moss Attention Rating Scale(MARS)

◆観察場面:
・生活場面全般

 

◆領域:
・注意

 

◯参考文献:
・澤村大輔:Moss Attention Rating Scale 日本語版の信頼性と妥当性の検討.高次脳機能研究32巻3号.2012年

 

 

・The ADL-focused Occupation-based Neurobehavioral Evaluation(A-ONE)

◆観察場面:
・食事・整容と衛生・移動・更衣・コミュニケーション

 

◆領域:
・神経行動学的障害全般

 

◯参考文献:
・東泰弘:神経行動学的障害の観察型評価法 ADL-focused Occupation-based Neurobehavioral Evaluation (A-ONE)の信頼性と妥当性に関する試行的検討. 作業療法36巻2号.2017年

 

 

などがあります。

 

これらの観察評価と机上評価を統合させながら病態理解を深めていきます。

 

 

 

脳の処理過程

実際に食事や整容、トイレ動作といったADLを行う際の脳の働きとして「5つのステップ」があります。

 

 

①認知:

視覚や聴覚、体性感覚などの感覚を統合する。

 

 

②評価:

扁桃体にて認知情報を海馬に蓄積した記憶と照合する。

 

 

③行動の計画:

前頭前野にて認知や評価で得られた情報の収集を行いゴールまでの段取りを行う。

 

④運動プログラム:

運動前野・補足運動野にて、ゴールまでの段取りを行う為に、どの様な工程を踏むのかのプログラムを立てる。

 

 

⑤監視:

前頭前野が立てた段取り通りに運動プログラムが働いているのかを前頭前野が監視をする。

 

これらの5つのステップを得てADL動作が遂行されます。

 

 

この過程を詳細に見ていくと、、、

 

認知

後頭葉で視覚、側頭葉で聴覚、頭頂葉の一次感覚野で体性感覚が処理され、これらの情報か下頭頂小葉で統合され認知されます。

 

また感覚情報の中で視覚は多くの情報を扱っています。

 

視覚はWhere経路とWhat経路に分けられています。

 

Where経路感:動きや見ているものの距離を捉えるなどの機能があります。

 

障害されると、半側空間無視・空間関係の障害が生じます。

 

 

What経路:見ているものが何かを処理などの機能があります。

 

障害されると、失認が生じます。

 

 

 

評価

下頭頂小葉で統合された「認知」の情報やWhat経路を経由して「見ているものが何か」の情報が側頭葉の辺縁連合野に処理されます。

 

辺縁連合野の扁桃体で現在生じている認知情報を海馬に蓄積された過去の記憶と照合して評価します。

 

その際に、この刺激は快なのか、不快なのかを評価します。

 

評価の過程で障害されると、記憶障害や情動の障害(意欲低下など)が生じます。

 

 

行動の計画

認知過程や評価で得られた情報の全ては、前頭葉の前頭前野にて処理されます。

 

前頭前野の働きとして、

・脳内の情報を収集し情報の統合を行いゴール設定を行う

・情動や感情の制御

などがあります。

 

前頭前野で統合された情報は、基底核や小脳と連携し、行動の計画(段取り)を立てます。

 

行動の計画で障害されると、遂行機能障害や作業記憶(ワーキングメモリ)の低下が生じます。

 

 

運動プログラム

前頭前野にて行動の計画を立てた後に、計画が遂行出来るように運動前野や補足運動野にて運動プログラムが立てられます。

 

運動前野は小脳と頭頂葉と連携し、補足運動野は基底核と頭頂葉と連携し運動プログラムを立てます。

 

運動プログラムで障害されると、失行症状が生じます。

 

 

監視

監視では前頭前野が立てた段取り通りに運動プログラムが働いているのかを常に監視し、間違えた行動を取った際に前頭前野が修正します。

 

監視で障害されると、目的・目標を忘れてしまう、問題解決が出来ない、保続が生じるといった遂行機能障害や作業記憶の低下が生じます。

 

 

 

トイレ動作での例

これを「ADL場面のトイレ動作」で例えると、

 

 

①認知では、

視覚情報や聴覚情報などの情報が下頭頂小葉で統合され「ここがトイレだ」と認識します。

 

 

②評価では、

「昨日から便が出ていない」「便が出たらお腹がすっきりする」などの過去の記憶と照合し快の刺激となります。

 

 

③行動の計画では、

「便器で便をする」という計画を前頭前野で立てて、「便器のふたを開ける→ズボン・パンツを脱ぐ→便座に座る→お尻を拭く」などの段取りを行います。

 

 

④運動プログラムでは、

前頭前野で立てた段取りを運動前野や補足運動野に送り具体的な運動プログラムを立てます。

便器のふたを開けるといった動作に対して、「どのような姿勢」で「どこの部位を使うのか」「どのような方向に対して力をいれるのか」といった事を運動プログラムで立てます。

 

 

⑤監視では、

「ズボン・パンツを脱ぐ前に便座に座る」といった手順に誤りが生じた際に、前頭前野が立てた段取り通りに遂行できるように修正します。

 

 

このようにして、「運動が獲得されトイレ動作が遂行できる」ようになります。

 

 

 

まとめ

・認知過程での段階で障害されると、半側空間無視・失認などが生じます。

 

・評価過程での段階で障害されると、アルツハイマー型認知症・情動障害・記憶障害などが生じます。

 

・行動の計画の過程での段階で障害されると、遂行機能障害・作業記憶の低下などが生じます。

 

・運動プログラムの過程での段階で障害されると、失行が生じます。

 

・監視の過程での段階で障害されると、遂行機能障害・作業記憶の低下が生じます。

 

・この一連の行動を集中して取り組めていない場合は、注意の持続性の低下が原因となります。

 

 

 

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参考文献

・種村留美:特集/リ八ビリテーションから考える高次脳機能障害者への生活支援.高次脳機能障害と作業療法. MB Med Reha.2018

・種村留美:高次脳機能リハビリテーション最前線. 作業療法士の立場から見た高次脳機能障害へのアプローチ. 高次脳機能研究第28巻第3号

・日本脳卒中学会:日本脳卒中ガイドライン2015【追補2017対応】.協和企画.2017

・東康弘:脳画像情報を作業療法に活かす2 最新のADL評価 :作業療法ジャーナル 2020